第38話 制御
『さぁ、ユウイチ。前回出した宿題の結果を見せてもらおうか?』
俺は、セレスさんとマールスさんの魔法の訓練に参加している。
俺は部屋で練習していた様に、禅を組み丹田にエーテルを集めるように集中する。
(2日前に集中し過ぎて、結に怒られたから、あれから昨日は10分も掛からない位でなんとか集束できて様な気がするから、これで良いのかをマールスさんやセレスさんに判断してもらおう。)
「ふぅ〜・・・では、やります。」
5分ほど集中した辺りで、腹の下辺りが熱くなってきた。
ゆっくりと集中を切らさないようにマールスさんへ話しかけた。
「『マールス』さん、これエーテルを集めれてますか?」
『おう。それで問題ないぞ。ユウイチ、その状態からエーテルを、手の平に移動させれるか?』
「ごめん。まだ無理です…。」
『マールス、また私がユウイチにエーテルの流れを分かるようにしてもいい?』
『姫様?手を繋いでやる、あれをですか?』
『そう。手を繋いでやるあれです。
でも、前と違うからね。私が顕現させるだけだから、ユウイチからは流さないようにしてもらうから。』
『う〜ん、分かりました。ユウイチ、わかっているとは思うが、な?』
「わっ、わかりました。」
『じゃあ♪ユウイチ、手を出して〜♪』そういってセレスさんが手を握る為に、禅をしている俺の前に対面になるように、座ってきた。
(やっぱりキレイだな〜。かわいいが先にくるけど、目や耳や口鼻、首とか各パーツ一つ一つが綺麗だな〜。)
俺が手を出したまま、セレスさんを見つめていると、セレスさんが顔を赤くしてモジモジし始めた。
『ユウイチ〜、そんなに見つめられると照れるよ〜?』と言いながら、何故か両手で俺の差し出している右手を掴みセレスさんが、俺を見つめてきた。
「『セレス』さん?どうかしました?」『はぁわっ!何でもないよ?じゃあ始めるね!』両手で手を握っていたのを右手だけで握り直し、左手をセレスさんと俺との中間の見やすい位置に持っていき、手のひらを上にしその上に、前回と同じく水の塊を顕現させた。
『ユウイチ?前みたいに出してみたけど、エーテルの流れは分かる?』
「分かりますね。身体から右手にエーテルが流れていき、手のひらから『セレス』さんに、流れていってます。」
『何か前と今回で違いはあるかな?』
「え〜っと、たぶんですが、前は結構流れていっていたと思うのですが、今は少しずつ流れている?流れる量が自体が少なく感じれますね?」
俺が答えるとセレスさんが、あれ?みたいな顔になった。
『ユウイチ…。もう少し顕現させる水の大きさを大きくしてもいい?』
「はい。大丈夫ですよ。」と伝えると、セレスさんへ流れるエーテルの量が増えた。
セレスさんの手の上の水の塊がどんどん大きくなり、10秒位で直径1メートル位の水の塊が顕現した。
『ユウイチ?なんとも無い?身体が辛いとか無い?』
「ちょっと出ていく量が増えましたけど、これくらいなら全然大丈夫ですよ〜。」と伝えるとやはりセレスさんが???みたいな顔をして、すぐに真剣な顔になり、『ユウイチ、もう少し大きくしていくけど、辛かったらずくに言ってね。』と言ってきた。
「分かりました。」(俺の限界を知るためのチャレンジかな?)
俺の身体からエーテルの流れる量が少しずつ大きくなり、それに合わせて、水の塊が、少しずつ大きくなり、ずくに水が部屋の天井に着きそうなくらい大きくなり天井と接触しそうになる直前に大きくなるのが止まった。
(ここの天井高いけど、この塊デカ過ぎない?)と考えていると、塊の向こうに見えているセレスさんが苦しそうにしていた。
「『セレス』さん!?大丈夫ですか?」
『まだ大丈夫だけど、一旦水を消すね。』と言い、すぐに水が減っていき手のひらから無くなった。そしてセレスさんが水を消した途端に後ろに倒れ込んで、
『疲れた〜。』と汗が流れるほど掻いており、顔に疲労の色が出ていた。
「『セレス』さん。大丈夫ですか?」と握っていた右手を離し、セレスさんに、近づいていく。それと同時にマールスさんも近づいてきた。
『姫様、ご無事ですか?』とマールスさんがセレスさんを支える様にしていた。
『大丈夫だよ〜♪制御出来る水の量のギリギリだったから、維持するのに疲れただけだから。ユウイチもマールスもごめんね。心配ないからね?』
『姫様、お伺いしたいのですが?制御出来る水の量が、いつもより小さかったと思いますが?』
『うん。この部屋壊さないように注意していたから、制御が難しかった。』
『やはりそうでしたか。なら少し休むくらいで大丈夫ですかね?』
『うん。問題ありません。けど、問題がひとつあるの?』
『問題ですか?』
『うん。』セレスさんが俺の方を見て右手を伸ばし、俺の左手の甲を包むように握ってきた。
『ユウイチのエーテルは明らかに多い。恐らく私に匹敵するくらいにあると思う……。
ねぇユウイチ?さっきエーテルを出してもらったけど、キツイとかは無かった?』
「特に何も無かったよ。」と答えるとセレスさんはやはりと言う顔をして、マールスさんは驚いた顔になっている。
『ユウイチ。それは本当か?身体はなんとも無いのか?』
「『マールス』さん、なんともないですよ。」と答えるとマールスさんは困惑し始めた。
『マールス、実はね、私さっきの顕現の時に、自身のエーテルを使用していないの。完全にユウイチのエーテルだけで顕現し、私は、制御だけしていたのよ。これ外でしていたら、水はもっと大きく出来ていたかもしれないわね。』と困った顔をするセレス。
『姫様……まことですか?
ユウイチ…これは大変なことだぞ!いや、不味い事になるかも。』
『マールス、ちょっと試してみたいことがあるのだけれど……。』
『はい?何でしょうか、姫様?』
そう言うとマールスの耳元で何かを囁いている。
『承知しました。確認してみます。
それと、ユウイチ。すまないが今日の訓練はここまでにしよう。姫様もお疲れのご様子だしな。ユウイチには、宿題だ。前回同様にエーテルを収束させる練習をしてもらおうかな?』
「そうですね。わかりました。宿題も分かりました。また練習しておきます。」
『ユウイチ。ごめんね』
「『セレス』さん。疲れさせてしまいごめんなさい。今日も教えてくれてありがとうございました。マールスさん次はいつ来られますか?」
『それは、マツオカ殿と調整しておくので、また知らせるが、恐らくは5日から10日位の空けて訓練を行うと思うぞ。』
「分かりました。楽しみに待っています」
『では、ユウイチ。またな。』
『ユウイチ。バイバイ♪またね♪』
マールスさんが手を軽く上げながら、セレスさんは、顔の横で手を振りながら部屋から退室していった。俺も2人に頭を軽く下げながら退室を見送り、自身の部屋に戻った。
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