第37話 練習

次の日


今日は、結と二人きりでの部屋にいる。沙月さんは、働いていた病院へ退職と結婚することになる旨の書類の提出と最後の挨拶に行った。一応明日の昼には帰ってくるとの事で、沙月さんが出た後、身体を軽く動かしたり、昼食をとり、訓練の宿題であるエーテルを体内で感じ、任意の場所に集める練習をしている。

結も魔法の訓練に興味心身で、少し離れた所から見学している。

「悠一は、エーテルを体内で集束ができているの?」

「集束はまだ無理です。というか毎日練習がてらエーテルを使わないと、どこにエーテルがあるのか良くわからなくなりそう。」

「そんなに分からないもの?」

「うん。魔法が使えるほどの力があれば、身体の中にあるのを感じれるとは思うけど、俺の中のエーテルは…なんというかイメージとしては儚い…かな?」

「何それ(笑)悠一は、儚いというか風前の灯火の方が合うよね。」

「ちょっと…結さん、俺泣くよ。」

「泣いたら、慰めるから大丈夫♪」

「甘やかしても何も出ないよ…」

「大丈夫♪練習終わったあとにたっぷりともらうから(ペロッ♪)」

結は舌舐めずりしながら、俺を見ている。

「お手柔らかにおねがいします。」

俺は諦めた。

「けど悠一、エーテルを集めるのって、拳法とかの…はっ?けい?発勁かな?に似てそうだね?」

「はっけい?何それ?」

「ちょっと待ってね…」


結は、隣の部屋からタブレット端末を持ってきて、何かを検索している。

「タブレットなんて持ってたんだ。」

「これね、悠一がこの施設を使用する際に、部外者には情報端末を使用させないという規定があってね…。今は悠一用にノートパソコンも用意するみたいだし、関係者と見られるので問題無いでしょ。」

「そうなんだ…。」

(あ〜、内部情報を外に発信させないようにする為か。確かに機密性の高い施設や工場とかはそういう規定あったなぁ。)

「悠一、これ見て。」

結がタブレット端末に、情報を映して見せてきた。

(あ〜久々に動画サイト見た。これは古武術の技か?発勁ってこれか。気を一点に集めて、それを打撃に乗せて威力を高める技術かな?)

「なるほど、これ試せるのならやってみたいな。この気をエーテルに変えれば同じ事出来るかな?」

「悠一、その下に関連動画で、気のため方?みたいな動画もあったよ。」

「まじで!?それ見たい。」

(どれどれ?あったよ。………………下腹部の丹田という所に、力を貯める・・・・力を貯めるのがイメージ出来ないから、困ってるんだけど。)

「う〜ん?お腹に力を入れればいいのかな?気かぁ〜。」

「悠一、ことわざで〔病は気から〕ってあるよね、気はみんな持ってると思うし。だから色々ためしてみよ?私も一緒にやるから、ねっ?」

「結……ありがとう。」

そう結に伝えると、結が真っ赤になり、俺にもたれかかり、顔を腕に擦り付けてスリスリし始めた。

(なに、このかわいい生き物、お持ち帰りしていい?………ここ俺の部屋だから持ち帰ってるわ。)

結を見て笑みを浮かべていると

「なに?私が甘えるのへん?30の女がこれするとキツイ?(泣)」

結が俺を泣きそうな顔で見上げている。

(あぁ〜、結は今年で30歳になるから、こんなにしてはいけないと思ってる子かな?まぁ傍に28歳になる沙月さんがいて、沙月さんってしっかりしているから、それに触発されて、普段は大人の女!みたいにしているからなぁ〜、甘えてもらえるのは俺は役得と思っております。)

「結、そんな事無いよ。結に甘えてもらえるのは俺は嬉しいし、いつもビシッとしている結がこう甘えているのって、俺しか見れないと思うと、彼氏としては嬉しいよ。」

と伝え、タブレット端末を置き、空いた手で結の頭を撫でた。

「う〜うぅぅ〜〜ん。」

結が悶えて俺にしがみついてきた。

(なんか、この空気感ってイイな。沙月さんだと、しっかりしてやる事完璧って感じだけど、スイッチが入ると、俺を甘々でトロトロに溶かそうとしてくるからなぁ〜その反動でダークサイドに落ちてる時があるけど…。これはこれでいい!)


とりあえず……今は練習だ。練習!

俺は、再度タブレット端末を見て、気のため方の解説を見る。

(丹田に力を入れて、そのまま瞑想の様に心静かにする。かぁ…。やってみないとわからんよな。)

俺は、禅を行う時のように足を組み、へその下に力を込め、その力を込める場所を指の先で触れて、意識する様に目を閉じて瞑想をするように、意識を沈めていく。

(何かお腹のあたりが熱くなってきた。何かある、異物ではなく感覚としてはそこにあるのに、これが集める事なのかな?これをもっと分かるようにしよう。)

「・・・ち!ね・・・いち!」

(誰かに呼ばれてる?)

「起きて、悠一。ねえったら、悠一!」結が悠一を揺らしていたが、禅を組んだまま身動きしなかった。

(やっぱり呼ばれてるな?起きなきゃ)

「ふぅ〜。」

「悠一?起きた?大丈夫?」

「結。慌ててどうしたの?」

「どうしたの?じゃない!禅を組み出してから3時間以上経っているわ。何があったの?」

「えっ?10分位の感覚でやってた。ごめん心配かけたよね?」

「息はしていたから、大丈夫だとは思ってたけど、心配したわよ。」

「ごめん結。」

「分かったから、お腹は空いてない?もう6時になるし、食事を作るね。」

「俺も手伝うよ。動いてなかったから、身体動かしたいからね。」

「じやあ、今から作るから料理が出来たのを机に運んでね!」

(想像以上に集中していたみたいだな?お陰でエーテルをしっかりと感じれた上に集めることが出来たから、御の字かな。)


その後食事をして、お風呂に入り、就寝まで2人で過ごし、

「悠一をもらいます♪」

訓練の時の言葉通り、結さんが凄かった。

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