第22話 雇用契約書

「仕事ですか?」

(どうしよう?いきなり仕事と言われても、

まだ十全な回復どころか、

ようやく歩けるようになっただけの俺が、

仕事ができるのか?)


「相楽君、きみは今この施設にて、

フローティア王国製の治療薬を使用する治験に参加し、

無事完治したが、元は転倒により脊椎を損傷し、

意識不明で寝たきりとなり数年間を送っていたと言うのは、

間違っていないね?」

松岡所長が手元にある資料を見ながら、

俺に話しかけてきた。

「はい。その通りです。」

「現在は、寝たきりになっていた事で

衰えた身体を元に戻すために、

この施設内でリハビリをしている。

で間違いないね?」

「そうです。」

「では、リハビリを終えた後は、

どうするのかね?

君は無職だと思うが?」

(うっ!イタイところをついてきますね?)

「そうですね。退院すると無職ですね。」

「相楽君は今41歳だよな?

働く先は見つかるのか?」

(うぐっ!そうですね。)

「そうですね。どうしましょう?」

「その年齢でどうしましょうではないだろう?

調べてみたら、君は独身で、

家族もご両親は他界しており、

唯一いるお姉さんも縁を切っているそうだね?」

(おじいちゃん、ちょっとストップ。)

「更には君は住む家も無くなっているね。

携帯電話も料金の未払いで停止している。

車も税金滞納と家賃滞納による差し押さえられ処分済み、

免許も失効しているから再取得かな?」

(ジジィ、やめろ。)

「相楽君、きみ詰んでるね。」

(このクソジジィ、

俺のライフにオーバーキルかましてきやがった。

現実突きつけられると泣きたくなってきた。)

「マツオカさん、

ユウイチが泣きそうになっているが、

今の言葉は何かの呪文か?

止めて貰えないだろうか?」

(マールスさん、

もう少し早く止めてもらいたかったです。

たしかに呪文ですね、

僕への特大ダメージが入りましたよ。

言われたことは正しいが…、

仕事を、受けるとしても、

そのまま受けるのは嫌だな。)


「所長、俺がその仕事を受けた場合の

条件を教えてもらえませんか?」

「ほっ!受ける気になったかね?」

「条件次第ですね。」

「条件か?この書面に書いておるから

自分の目で確認しなさい。」

そういって、黒のバインダーファイルに入った、

数枚の書類をマールスさん経由で

俺に渡してきた。


(えっ〜と、何々、雇用契約書?

待遇 嘱託員

業務内容 他国との外交活動全般

勤務日 指定する週5日

休日  指定する週2日、春季、夏季、秋季、冬季、他指定する日

勤務時間 08時30分から17時15分

休憩時間 60分

時間外勤務 勤務時間外の勤務については別途法令に定められた割増賃金を別途支給する

 但し月間残業時間及び年間残業時間の上限については、関係法令で定める時間内とする。


業務内容については本当に何やらせる気だ?

ただ、それ以外は何か凄いホワイトな企業だな?






ん?給与?




給与 月額 1,500,000円


わ〜すごい額だな〜

前の3倍以上だよ。



特記事項 傷病によるやむを得ず勤務が出来ない場合は、双方の同意の上、賃金を日割にて支給する事がある。


あ〜、リハビリをしながらでもいいんってことかな?





あとは、この契約者かぁ



乙  相楽 悠一



甲  フローティア王国

    国王 サートゥルヌス・フローティア




こっちじゃなく、フローティア王国なの?)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る