第18話 機密事項

マールスさんが、

下を指差し自分の国の入口は、

この下にあると告げられ、

俺は混乱していた。

(ん???下にある?意味が分からん。)

「『マールス』さん、下にあるんですか?」

『そうだぞ〜。転移陣の上にこの施設があるぞ〜。』

(転移陣?なにそれ?)

「『マールス』さん、ちょっと待って!転移陣ってなんですか?!」

『それは・・』

「マールス殿!お待ち下さい。」

マールスの言葉を遮る様に、

部屋に入ってきたのは、

白衣を来た初老の男性を先頭に、

施設のスタッフらしき数名いる。


「プロフェッサー。どうされた?」

(マールスさんの喋り方が、変わった?日本語かな?

ってか、このおっさんよく見たら、

施設に来たときに会った、

何とか教授だよな?)

「マールス殿、国と国で交わした約定をお忘れですか?」

「む?『気づかれたか。』それは失礼した。」

(気づかれただけ、何で変えた?

まさか、俺やらかしたか?)

「おい、そこの実験体。退室しなさい。」

(おん?やっぱりこのおっさん嫌いだわ〜!)

俺の顔が不快感に歪めている事に、

マールスさんが、馬島教授へ話しかけた。

「プロフェッサー、我が友人に失礼な事を、

言わないでいただけるかな?」

マールスさんの声掛けに、馬島教授は少し考え、

「それは失礼しました。

だがマールス殿、関係のないものに、

機密事項をお話しされるのは、いかがなものか?」

(機密事項?聞いてはいけない内容?

下に門がある事?それとも転移陣のことか?)


マールスさんが、苦虫を噛み潰した様な顔をしながら、

「ユ…。相楽は、関係者ではないのか?

関係者で無いのに、なぜこの施設に入れた?」

(ユウイチって呼びそうになって変えたよな?

マールスさんもこのおっさんは苦手なのかな?)

馬島教授は顔色を変えずに

「彼はエーテルを使えるかも知れないだけの、

ただの実験体です。

我が施設にて実験をするために、用意しただけの事。

その様な物に機密をお話しすることはありません。」

(実験体って言ってるのはそういう事か!

やっぱりこのおっさんはキライだわ。

あれ?マールスさんの様子が?)


マールスさんの周りの空気が、熱くなり、

マールスさんの顔が怒りに満ちていた。

「プロフェッサー!!我が友人を物扱いか!!!

友人を愚弄するのは、我を愚弄する事と知れ!」

マールスさんが叫ぶと、彼の身体からオーラの様に炎が上がった。

(うぉ〜ぃ!!マールスさんキレてます?

怒っている人が、目の前にいると、

冷静になるってこういう事だよな〜。

ただ、マールスの身体の周りに炎が出ているのに、

この熱量なら結構熱いはずなのに、あんまり熱いとは思えないなぁ。

けど、おっさんやスタッフの人たちは凄く熱そうにしているな。)

俺が平然とした表情でマールスさんを見ているのを

マールスが気がついて、マールスさんから出ている炎が、空気に霧散していった。

『ユウイチ?君は怒らないのか?』

マールスさんが呆れた顔で告げてきた。

「いや、『マールス』さんが怒ってくれたので、

何か冷静になれました。

私の為に怒ってくれて、ありがとうございます。」

俺はマールスさんに頭を下げる。

それを見たマールスさんが顔を引きつらせながら

『おっ、おう。良いんだけど、怒っても良いはずだけどな……』


部屋の隅に逃げて、事の次第を見ていた馬島教授が話しかけてきた。

「マールス殿!!このような無礼は、

国を通して抗議をさせていただく。

そこのお前は退室せんか!お前ら、連れていけ!」

(おっさんマジ切れしてるけど、

マールスさんが怒った原因作ってるのおっさんなのに、

無礼とか言ってるよ。

けど、流石にこれ以上はマールスさんや、

夏川先生に迷惑かかりそうだから、

戻った方がいいよな?)

「『マールス』さん、不味そうなんで、戻っておきます。」

俺が笑顔で、マールスさんに告げると

『おう、そうか。めんどくさいのが来たし、仕方ないか。』


「まぁそう言わないで下さい。

次の訓練も『マールス』さんが来ますか?」

『多分俺だが………不満か?』

(マールスさん、ニヤリとしながら言わないでくださいよ。)

「そんなことないですよ!

次もよろしくお願いします。」

『任せろ!』

マールスさんが手を差し出してきたので、

俺はそれに答え握手をする。


その瞬間、握手した手から、何かが流れた気がした。

(えっ?なんだ?静電気かな?

何か違う気がするけど、スタッフさんが部屋まで

連れて行ってくれるみたいだし、行くか。)


俺は、おっさんと他のスタッフの横を通り、

来る時に案内してもらったスタッフさんに連れられて、部屋へ戻って行った。





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