第四章 父との話し合い②
「さぁ、話を戻しますわ。領都へ設置するトイレの清掃管理の仕事は、街で募集してから、仕事の訓練に付いてもらいます」
「人材募集は、商業ギルドが主にやっているが…そちらに頼むのか?」
「街に掲示板を……あ~そうか。ここで、識字率の弊害が現れるのか」
私は天を仰ぎ、額に手を当てた。日本にいた時の感覚が抜けていないと感じる時があるけど…やりづらいな。お嬢様言葉も忘れて、素で呟いた。私もミリーに言えた義理ではなかった。
「識字率の問題もあるにはあるが、商業ギルドは人材を紹介する前に、ちゃんと審査をするからな。余程のことがない限り、下手な奴は紹介されない。実績もあるから、信頼度も違うぞ」
「それは、スラムの人も入っているのですか?」
「いや、入っていない。カティアには言いにくいが、スラムの住人は領民ではない。ただ、外壁の外と領都の隅を専有して居座っているに過ぎん。スラムの住人は、主に冒険者ギルドに登録して、依頼をこなして生活費を稼いでいる」
スイッと視線を逸らされて、スラムの人の生活費調達について聞かされたけど…父もスラムの問題が放置出来ないことは、理解しているらしい。
「市民権がないことは知っていますが……もしかして、神の祝福も受けていないのですか?」
「………そうだ。カティアは知らないかもしれないが、祝福の儀にも『お布施』というものが存在する。金額は銀貨三枚からとされているが…1日を銅貨数枚で凌ぐ彼らには、銀貨は大金だろう」
「分かります…分かりますよ。教会を支えている神職者だって、人間です。お金を得なければ、運営するどころか餓死しますからね。慈善活動も寄付で行われていますし…」
父は、商業ギルドを介した人材募集を勧めてくるが、私の目指す道と離れていた。私はあくまで、我が家の貧乏脱出と、自身の生活水準向上を目指していたから。
その為に、領地に過ごす人々には、経済を回してもらわなければならない。だから、定職に就けない人たちの就業支援に、学業や就職訓練を盛り込ませた素案を考えていた。彼らに職を与え、生活にお金を使ってもられば、自ずと経済は回るはず。
すぐには目に見えて分かる成果は出ないかもしれないけど、10年後には間違いなく数字として比較出来る成果は出るはずだから。
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