第三章 八話
今日は家庭教師の授業はお休みの日だから、前に買ってあった本を読もうと思う。商業ギルドの商品になりそうなものがあればいいよね。甜菜でプリンとかの甘味チートは定番だから、やるけど。
それにそろそろ、砂糖尽くしが贅沢という
「だから悪気はないんだろうけど…毎度処分に困った両親が気の毒なんだよね。虫歯じゃないけど、怪しい歯がある…ってお父様が嘆いてたし」
ヒールで治るか?あれは怪我には聞くが、何年後かに急死したりする事例があるとも聞く。衛生概念がないけど、ちゃんと汚れを流して消毒してから、ヒールかけてるんだろうな?治癒師よ。
「確か、薬と美容のレシピ本を購入してたよね」
私はアイテムボックスからお目当ての各々のレシピ本を取り出した。
『神が極めし薬学術』
『神が極めし美容術』
「本の題名だけでも、この世界じゃヤバさを感じる」
あっちじゃ厨二病だけどね。私は口元を抑えて、ヒヒっと笑う。
「薬学術に美容術って、全部に術が付くんだ。そう言えばアードルさんも、トイレを出した時に、魔導具の術式とか言ってたような。もしかして、魔法陣みたいなやつがあるのか?」
アニメで見たことあるけど、あの魔法陣が光る瞬間が好きなのよ!幻想的でアメージングッ!とワクワクしながら、まずは薬学術本のページをめくってみれば、解説の文字が飛び込んできた。
「…まぁ、そうよね。私の前世も解説と目次は外せないものね!」
若干気落ちしつつ…ページをパラパラとめくっては、文章に目を走らせる。
「………………、…………薬学術といっても、色んな職業の人が学ぶのね。主に履修を推奨する職業は、
同じ医者とかでも、色んな――医と言うように、技術と研究で枝分かれしたりするもんね。
(「お前は、大学府に顔を売るつもりか?」)
ふと、お父様が前に言っていた言葉を思い出した。
大学府に伝手はあるかもしれないけど、ああいうところって設備とか資金とか豊富だもんね。5歳児の私が誘っても、貧乏寄りの辺境伯家の子供が!?って鼻で笑われそう。もしくは、変人呼ばわりか。最悪、両親の悪評に繋がりそうだからパスかな。親友とか…確かな繋がりを持つ伝手がないか、ママンに聞いてみようか。
さてカテゴリーとしては【初心者でも簡単な薬の作り方】【初心者に毛が生えた人向けの薬の作り方】【調子に乗りかけの初心に還る人向けの薬の作り方】【前回を乗り越えた人向けの薬の作り方】【中級者が作るちょいムズ薬の作り方】【工程に慢心が芽生え始めた人向けの薬の作り方】……この本は、どうして私の性質を抉るカテゴリー名の書き方なのかな!?
家庭科で半ズボンを作る時、裁断は上手くいったからって、途中から雑になって、完成判定が最低のC判定だった私の傷が、
大雑把な私が学びを得た出来事だったけど、その性質が治ることはなかった。きっと魂に染み込んだ性質なのだ!…と開き直っている。
ポーションの種類は体力回復・魔力回復・
問題は、それ以上の
「お父様に頼んで、お抱えの書写係を雇ってもらわなきゃ」
もちろん私の希望で雇ってもらうから、お給金は私が稼いがなきゃいけないけど、平均はどれくらいかな?守秘義務の『魔法契約』込みだから、お給金に少し色をつけて…雇う時は、変な人を雇わないように、私が鑑定もしないとね。書写係の募集条件に『要守秘義務事項ありの為、鑑定試験あり』って書かなきゃ。これで虚偽の申告は出来ない。
◇
次は『神が極めし美容術』だけど……一杯ある。薬学術の本の5倍ぐらいの厚さ。小学性の頃の夏休みの宿題並みの、あの圧力。
「取り敢えず1ページ目を…」
『この本を扱える人は以下の方に限られます。
・テイマースキル所持者
・スライム大好き人
・スライム飼育・研究に興味のある方
・スライムの無限な能力に興味がある方
・スライムに人生をかけてもよい方
・スライムと一緒に生活出来る方
・
・
・ 』
「目次は?すぐに解説に入るほど、スライムがとっても重要なのは分かったけどさ」
つらつらと綴られている文章には、どこか気迫を感じる。この本を書いた人は誰なのか気になって、背表紙を見てみた。
「……ウルシラ・ウラナージ。ヴァンリー・ファレイ。二人による合作かな?でも、誰だろう?」
1.スライムの生態を知ろう。
分布…川辺・草むら・木の木陰
大きさ…3センチ〜15センチ
獲物…雑食(好みあり)
攻撃…こちらから攻撃しない限り襲われない。個体変異種は、
2.スライムをテイムしましょう。
『スライムは、川辺や林や森の草むらや影に潜んでいます。テイムする時は、雑草を地面に置き、少し離れた場所から優しく語りかけましょう』
3.スライムの好みを知ろう。
『スライムを無事にテイム出来たら、次は草原で友好を深めましょう。ラビットやラットやモールに襲われないように、スライムに気を配りましょう。スライムは基本雑食ですが、彼らにも好みがあります。大半は雑草についている効果に引き寄せられます。
〈例 名前 雑草
特性 ツルン成分保有〉
このように十本に一本の割合で、特性が付いた雑草があります。普通の鑑定では分からない雑草の特性は、スライムをテイムして生えた派生スキル『食事鑑定』にのみ表示される仕様です。雑草は、何故踏まれても千切られても貪欲に生えてくるのか…それは、超貧弱なスライムの食事と特化を目的として創られた植物だからです』
なんか、はるか昔の世界の始まりの一端を知った気分…。しかし神よ。始めは神も下界にいたんだから、人々に説明したりしなかったのか?
『したよ!でも人間は流れ行く時代とともに生きる生き物だ。滅亡復興を繰り返す彼らには、正しく伝承していくことが困難だったんだ!』
「うわぁ!?…なんの声!?」
まさかの思考に返事!?しかも、聞いたことのない少年の声?私は驚きのあまり、本を放り投げてしまった。
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