第三章 七話


「明後日に面会かぁ。お母様が、お父様に早速報告してくれたと見て、間違いないな」


 お父様には以前、『私の活動資金はスキルで金策する』と言ってあるから、それを踏まえての面会だろうな。色々聞かれるだろうし、神々の百貨店で買い物して準備しておくかな。


「ステータスオープン!…神々の百貨店をポチッとな」


「はぁい、妾は首を長〜くして待っておったぞよ」


 首をろくろっ首のように長く伸ばして、歓迎?してくれるアヤメ。


「久しぶりだね、アヤメ。一つ質問なんだけど、本当に接客精霊のチェンジって聞かないの?」


 どこに、客を妖怪姿で出迎える輩がいるのか。ハロウィンじゃあるまいし…苦情を申し立てたい程である。


「あわわ!?それは無理な相談ですぅ!……これですか?この妖怪の演出が駄目でしたか!?なら、早速取り止めですぅ!」

「…はぁ。相変わらず口調がコロコロ変わるね、アヤメ」

「私は、声優を目指しているのじゃ!いつの日か、カティアがテレビを作って、アニメを放送するのを夢見て、練習に励む毎日じゃ」

「…左様ですか」


「さてさて気分を直して、今日はなにをお買い求めですか!?」

「…以前買った魔導トイレの一番高いやつを12個と、洗面器を12個。あと、甜菜を育てたいの。今回は急ぎなんだけど『それなら、甜菜の砂糖がありますよ!』…それを10キロと甜菜の種と肥料と成長促進剤と、農作物や植物を育てる温室を一つ。広さは、学校の教室一室くらいがいいわ」

「はいはいはぁい!甜菜の種は病気知らずの種がお勧めで、肥料は土壌の栄養増々ましましで、成長促進剤は、どんな作物も一週間で収穫可能だぁ!温室にいたっては、虫除け効果抜群の上、不審者用結界搭載だぁ!悪感情を持って温室に触れると、感電しちゃうよぉ!?」


 なんかアヤメのテンションがまた高くなってきたなぁ。バナナのたたき売りって知ってる?あんな感じ。だんだんヒートアップしていくんだよね、あれ。


 お母様は、商業ギルドの試験で、見本の提出を求められると言ってたからな。あれは、その場で作らないと不正にならないのか?でも、持ち込まれる商品も様々だし、きっと鑑定みたいな調査道具があるんだろうな。


「アヤメ、落ち着いて。実はね、お父様とはまだ話が出来てないんだけど、商業ギルドに登録するつもりなの。それで、ギルドで行われる試験用に買い込みに来たのもあるんだけど、その前に、後見人責任者のお父様の説得をしなくちゃいけないの。それで甜菜の砂糖を使って、プリンを作りたいんだけど、蒸し器ってある?」

「あぁ…蒸し器はないなぁ。蒸しプレートは?鍛冶神の心地を注いだステンレスみたいな合成金属だよ」

「…それは、オーバーテクノロジー過ぎない?」


 主にアードルさんとかドワーフ族に、青天の霹靂が走りそう。しばらく秘密にしようかな。


「オーバーテクノロジーじゃないわよ?ただの調理器具だし」

「さっき鍛冶神が心血を注いだって…『天界こっちじゃ普通だもん』…そう。なら、それを5つ下さいな」


 よし!秘密に決定。天界では普通っていうけど、神が心血を注いだものが、普通なわけないでしょ!私は、あやめのいい加減さに内心で呆れた。


「かしこまり〜!あっ、種と肥料と成長促進剤は、10個ずつ下さいな」

「かしこまり!では、甜菜の種、肥料、成長促進剤10個ずつ、温室一つ、蒸しプレート5枚、魔導トイレ12個、洗面器12台でいいですか?」

「うん、お願い」

「あっりがとうございま〜す!では、後ほどご確認よろしくお願い致しま〜す!」

「えぇ…またね」

「はい、お待ちしてます!」


 さて、明後日のお父様との面会までに、たくさんある議題を軽く纏めておこう。これから先の見通しが立つだけでも、お父様は動きやすいだろう。



 

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