第三章 四話ノ二

今日は、キリよく短めです。よろしくお願いします。


「お館様、カティアお嬢様がおいででございます」

「…ん?」


 扉の外から聞こえてきた声は、廊下で警備にあたっているローザだった。


「入れてくれ」


 先ほどヴィクターが来たばかりだが、なにかあったか?ガスパールは、そんなことを考えながら、シルベスタを促した。


「お入り下さい」


 扉を開けたシルベスタに促され、カティアは部屋の入口で一礼した。


「失礼致します」

「カティア、なにかあったか?急な訪問など珍しいな」


 書類に埋もれている父は、嫌な顔をせず迎えてくれて、感謝する。


「お仕事中に申し訳ありません、お父様。申請書について修正したい箇所がございまして、まだ修正が聞く段階か、確認に来ましたの。また、アードルさんの助言を受けた見積書も、お持ちしましたわ」

「…そうか。見積書を受け取ってから詳細な精査に入るから、申請書の修正は、まだ間に合うぞ」

「そうですか…良かったです」


 私は父の言葉に、ホッと胸を撫で下ろした。ガスパールは、机の引き出しから一枚の書類を取り出した。


「これが、カティアが提出した申請書だ」

「…ありがとうございます。至急、作成し直しますわ」

「参考程度に、どこを修正するか聞かせて貰えるか?」


 ざっと見ただけだが、あの書類になにか問題があっただろうか?


「使用人雇用について提言した箇所ですわ。やはり、魔道トイレ自体が清潔に保てても、トイレの床や壁の掃除は必要だと思い出したのですわ」


 尿ハネの実証実験を思い出したことによって、機械化が全てではないことを思い知らされた。レジやウェイトレスや配送が機械化しても、やはりどこかで、人の手は必要になってくる。


「どういうことだい?トイレが綺麗になると、カティアも喜んでいただろ?」


 あの実験を知らない父は、首を傾げて不思議そうにする。敢えてあの実証実験を、こちらでもするべきか?どちらにしても、使用人の衛生講習では触れるけど。

 自分の仕事で、皆がいかに気持ちよく使用出来るか判明すれば、仕事への意欲も湧くかな?


「はい、それは間違いありません。今詳しく説明すれば、大幅な時間を取られてしまいます。ですが、トイレの室内清掃の人員は、変わらず必要ということだけご理解いただければ…。申請書に記したように、トイレの着工許可が出れば、お屋敷の使用人に、衛生概念の意識改革の講習を行う予定です。ですがその前に一度、家族の前で、模擬講習を行いたいと思っております」

「なるほど。屋敷の皆に見せる前に、練習に付き合えばいいんだな?ファルチェには、私から言っておこう。申請書は新しいのを急ぎ出すように…見積書だけ先に貰っておこうか」

「ありがとうございます」


 お父様も、政務が滞るのは望んでいない。渋々頷いていたけど、模擬講習に納得してくれた。それに、屋敷の皆に教えるのだ。講習の内容を、一度お館様トップに聞いてもらって、問題がないか確認しなきゃね!


 







  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る