第二章 八話 ガーディア辺境伯領導入期
「エイリックたちの紹介が終わりました?…次は私の番ですよ。貴方は執務にお戻りになって下さいな」
扉のノックが聞こえ、父が応えば、母が入って来るなりそう言った。
「なんだ、もうそんな時間か。名残惜しいが、仕事は待ってくれないからな。カティア、彼らを上手く使えよ」
「…?畏まりましたわ」
上手く使う?私は、父の言葉の意味が分からず首を傾げながら、了承の意を返す。
そんな私の様子をちらっと見ていたけれど、特になにも言わずに退室した父だった。
父が(争いのない国で育ったから、あまりピンときてないな。兵士のことを知らなくて当たり前か。まぁ、軍施設に出入りするのだ。自ずと理解するだろう)なんて、考えていたなんて知らずに。
「…さぁ、入ってちょうだい。エイリックたちもいるから、顔合わせにちょうどいいわ」
「はっ!失礼致します!」
お母様の掛け声に、エイリックたち4人は部屋の端に寄る。新たに入ってきたのは、2人。
「カティア、順番に紹介していきますね」
「はい、お母様」
「ヴィクター」
「はい」
母に呼ばれて前に出てきたのは、20歳くらいの執事服を着た青年だった。
「モンド」
「はい!」
次は13歳くらい見習い従者服を来た少年だ。
「アリサ」
「はい」
ん?彼女も呼ばれたね。彼女は私のお世話役として来室することが一番多いメイドだ。18歳くらいの落ち着いた女性である。
「以上3名が、今日からカティアに付く専属使用人たちよ。契約魔法については、ちゃんと了解を得て済ませてあるわ」
「分かりましたわ、お母様」
「私共から説明致します。今日ここにいる皆さんは、カティア様の専属使用人の配置になりますので、カティア様に誠心誠意仕えるように」
「執事・ヴィクター、メイド・アリサ、見習い従者・モンドの以上3名が、本日付けで、カティア様付きとなります」
メイド長メリッサに続いて、補佐であるロンデから詳しく説明された。いわゆる辞令だね。皆の引き締まった顔付きが、今後の仕事への意欲を伺わせた。
私の新社会人の頃の、初心を思い出すなぁ。「やってやるぞぉ!」と心密やかに燃えてたっけ。
「カティア様…こちらが彼らの身上書になります」
「分かりました」
私は早速アリサに目配せをして、身上書を預かってもらう。別に身上書を見なくても、鑑定すれば分かるけで、あまり気持ちの良いものではない。余程のことがない限り、見ないようにしよう。
「私が皆の主となるカティアです。これからどうぞ、よろしくお願いしますね」
「「「「「はい!」」」」
専属使用人の人物紹介
(身上書抜粋)
執事 ヴィクター
年齢 18
髪色 紺 瞳 薄い茶
性格 真面目、頑固
家人歴 8年
紹介者 シルベスタ
メイド アリサ
年齢 17
髪色 オレンジ 瞳 薄い黄
性格 しっかり者、お茶目
家人歴 6年
紹介者 エリザベート・ロイズ
見習い従者 モンド
年齢 13
髪色 茶 瞳 茶
性格 控えめ、力持ち、優しい
家人歴 2年
紹介者 ダリウス・ミラー
◇
「聞いてくださいよ、お母様!」
「あの人にも困ったものね」
愚痴を零した私に、母は苦笑しながらそう言った。毎度頬に手を当てているけど、癖なのかな?
「自分の得意な分野を見せることが出来て、嬉しかったのね。あの人なりの激励のつもりなのよ」
「ただムカついただけですけどね!…そうですか。父様なりの励ましですか。それは是非、親心に報いてあげなければなりませんねぇ」
一応募集はかけるけど、エイリックたちの働きが気に入ったら、こっち側に勧誘してみようかな?…なにせ
にやぁ…と笑う私を見て、母はわたしがなにか企んでいるのに気づいたらしい。
「ほどほどにしてあげてね」
しょうがないわね…って顔をしながらため息を吐く母に、私は満面の笑顔で頷いた。
ちなみにお母様の周りには、先ほど紹介されたばかりの執事・メイド・従者が…部屋の隅には護衛4人組が…ポカンとしながら、壁際に沿うよう控えていたのであった。
お母様も超特急で、私の世話役を構えてくれたみたいだね。ありがたや、ありがたや。
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