『キラキラちゃん』

名前:キラキラちゃん

脅威度:高

人を死に追いやる可能性あり。

その後の行方は不明。


私が彼女と出会ったのは、私が302号室に出勤した時のことだ。

その日、私が302号室を開けると一路くんが頭を抱えて蹲って小さく「ごめんなさい」とつぶやいていた。

それもそのはず、302号室の部屋はすっちゃかめっちゃかになっていた。

掃除も大変だと思いつつ、理由を聞くと一路くんは1体の人形を抱えていた。

ビスクドール…でもない、恐らく普通の大きめのドールだろう。

綺麗な金の髪に整った顔つき、そしてオシャレな青いドレスとヘッドドレスを纏っていた。

高そうなドールだが、それを守るように抱えている一路くんにとても違和感を感じていた。

理由を聞くと、一路くんはゆっくり話してくれた。


今日は日曜日。

高校生の一路くんは、誰よりも早くあさイチにこの場所へやってきた。

と、言っても302号室には定住している女の子、定ちゃんがいるわけだが、彼女は彼女で奥にある別室を自室として使っている。

起きるのも昼過ぎであり、都市伝説にわざわざ来る人間もいない為、一路くんに気付くことはなかっただろう。


一路くん曰く、あさイチに入ってきて冷蔵庫に置いてある飲み物を手に取った瞬間、ドアノックがされたらしい。

開くとそこには宅配便業者の女性がいて、「お届け物です」と言って1つのダンボールを託された。

一路くんはダンボールを受け取ると宅配業者の女性は行ってしまった。

あて先は不明、送り先は「302号室」とだけ。

更に内容物には「人形」と書かれていた。

一番怪しいのは本来宅配業者ならハンコを押して配達証を渡すがそれを一切受け取らなかったことだろう。

結論から言うと十中八九この女に人形を「押し付けられた」かたちになる。

一路くんが箱を開けると、先ほどの人形が入っていた。

特に何もないことを確認して箱に戻すと、人形が喋り出したという。

「私、キラキラちゃん。よろしくね」

その時、棚に入ったグラスが飛び出して壁に激突した。

何があったのか確認した直後に、再び。

「私、キラキラちゃん。よろしくね」

今度は冷蔵庫に入っていたワインが飛び出してきた。


その後、何処からかナイフが落ちて来たり、机の上にあった大きめのファイルが襲ってきたりと、一路くんは何かと大変なことに巻き込まれたようだった。

私が来た時の第一声が「ごめんなさい」なのは彼の人柄だろう。


少なくとも、こんな品を置いてはいけないと思い、私は他の皆が来るまで箱に人形を戻し、知り合いの寺に電話をすることになった。

住職からの持ち込み許可を得て、他の皆が来るまで少し待って。

一路くんと先輩の詩織ちゃん、冬伊くんと共に隣町の寺に行ってもらった。

もちろん、お金は持たせた。


それから、彼等に何があったのか詳細はわからないが。

テレビでもバスに激突した一般車両。

電車が人身事故を起こすなどといった大きな事故がこの周辺で多数起きていた。

間違いなく、キラキラちゃんの仕業だと思った。

ホラー的に言えば「呪われてしまった」といった方がいい。

結果的に寺に預けることが出来たので、一路くんのお役目は終わった。


しかし、ここからが問題だった。

夜間、寺の供養用人形置き場で火災が発生。

預かった多くの人形が焼けてしまった

燃える音ですぐに気が付いた住職は消防に連絡して、事なきを得た。

人形たちの半数は焼けてしまったが全焼には至らなかった。


その中に、あの人形の姿はなかったのだという。


今思えば、キラキラちゃんというのはキラキラした見た目ではなく

Killerという、貴方を殺す人形という意味だったのかもしれない。

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