『町はずれの廃ビル302号室』

名前:町はずれの廃ビル302号室

脅威度:低

我々の活動拠点。


次の話をする前に、私たちの活動拠点である「町はずれの廃ビル302号室」の記載を忘れていた為、記載しておく。

この廃ビル302号室は、インターネット上で噂されているリミナルスペースに近い場所だと、私は思う。

行く手段は簡単で、町はずれにある廃ビル、302号室に入るだけだ。

私は若い頃、H市に存在する噂の302号室へ向かった。

まだインターネット回線なんて言わずに、パソコン通信と呼ばれていた時代だ。

学生も学生だった。

廃ビルは廃ビルらしく、コンクリートと鉄筋がむき出しの古びた廃ビルだった。

雑居ビルのような形になっていて、歩くたびに床が抜けるんじゃないかと冷やついたものだ。

廃ビルの3階に行くと、4部屋先に延びていた。

その中の302号室、手前から2つ目に手をかける。

一応、ここに来るまでの間に「さまざまな階層を見てきたが、どれもこれも窓枠もない、がらんとした寂れた場所だった。

いわゆる、人の気配などない、完全な廃墟だということが分かった。

私が302号室の扉を開ければ、空気が違う事に気付く。

そして、一目瞭然なのは部屋の配置だ。


部屋として、存在している。

壁は壊れておらず、少々広い、綺麗な空間が広がっていた。

左手にはドアがあったため、そのドアも念のために開く。

中からお化けが、なんてことはなく、少し狭い、小さめの廊下があった。

一番奥と手前に1部屋あり、一番奥はトイレ、手前は少し広めのスペースになっていた。

トイレはなんと水洗で使う事も出来る。

若い頃の私は、これは秘密基地になり得る。と思って私物を入れたりなんなりしてきた。

大人になって職に就き、ホラー雑誌の記者になり始めた頃、私はここを個人事務所として構えることにした。

表向きは異変解決だが、裏は私のホラー雑誌のためである。要するにネタ探し。

ソファーを置き、机を置いて、明るいランプも付けた。

不思議なことに、この部屋の中では電波も通じるしテレビも付くし充電も出来る。

昨今のネット社会では大変便利な秘密基地となった。


最初は1人でやってきて都市伝説の解決に勤しんだ。

しかし、そのうち都市伝説の解決を手伝いたいと言ってきた人も増えてきた。

それが、詩織ちゃん、冬伊くん、定ちゃん、一路くん、紫樹くん、蓮華ちゃん。

彼らの尽力があってこそ、都市伝説の多くを解決した。

時には解決しきれなかったこともある。

だが、彼等には感謝してもしきれない。


かくして、いつの間にかここの都市伝説の内容も変わっていた。

「都市伝説の困りごとは302号室が解決してくれる」と。


あまり都市伝説の改変は褒められたものではないが、これはこれで悪くない。

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