第166話

 初戦から二日後、敵の増援がやってきた。

 最初にいた数の数倍に膨れ上がっているのでダンジョン内の魔法無効化モンスターのほとんどが出張ってきてるだろう。


「いや、増援の内四割は物理耐性のモンスターだ。俺様と坊主が初日にはしゃぎすぎたな」


 それはそれで普通に魔法で倒せばいいから問題ない。

 この二日で砦の兵士は少しずつ後方へ減らしていって今は、俺とマスターソード、エスリメの精鋭百名とヒューマンスライム三百名だけ残っている。


「敵さんビビッてまだ動きそうにないな。今のうちだ」


 俺たちは魔法で姿を隠しながら敵軍の背後へ回り込み、そのまま全速力でアンチマジックダンジョンへ馬を走らせた。


「よし、これでちょうど良い時間だ」


 数時間後俺たちはアンチマジックダンジョンの入り口にたどり着いた。

 今頃敵軍はようやく砦がもぬけのからになってることに気づいて侵攻を再開しているだろう。


「アンチマジックダンジョンのダンジョンマスターにスライムダンジョンのダンジョンマスター雄亮がダンジョンバトルを申し込む!今から24時間後にバトル開始だ!」


 片足だけアンチマジックダンジョンに突っ込んで俺はそう叫んで、すぐにダンジョンから距離を取った。


「成功だな」


「ああ。これで敵の戦力は二分された」


 ダンジョンバトルまでの準備期間は最短の24時間で申し込んだ。ニアラは慌てて外のモンスター軍を呼び戻すだろう。


 しかし、敵が砦からフェアリース方向へ侵攻してきた道の近くの森や岩陰には伏兵が隠れている。

 今頃再集結して退路を塞いでいるはずだ。


 追加の戦力としてアダマンタイトゴーレムスライムが千体来ているので抜かれることはない。

 俺たちの仕事は、ないとは思うがもし、ニアラがダンジョンから増援を出したときの時間稼ぎだ。


 正直、増援を出してもらった方がダンジョンバトルで有利になるから出して欲しいところだが流石に乗ってこないだろう。


 俺側の優先順位は1.ダンジョンバトル勝利。2.妖精族の防衛だ。

 ニアラも俺とのダンジョンバトルに勝ちさえすれば、妖精族なんてどうとでもなるから結局本命はダンジョンバトルということになる。


 本命の戦力を割いてまで、帰ってこれる確証もない戦力の回収はしないだろう。

 こっちは勝ったらラッキー程度に考えは移ってるはずだ。


 実際、24時間経っても敵の増援は出てくることはなかった。


「よし、後はマスターソードは千騎率いて遊撃だな」


「おう、俺様が戦局を決めてやるぜ!」


 マスターソードと拳をぶつけ合って、俺たちは軍に合流するために馬を走らせた。


「どうだ?」


「はっ!今のところ大きな衝突は起きていません!」


 軍と合流して俺は、副官から状況を聞いた。

 軽い戦闘が起きて死者が妖精族から数十名出てるがこの規模の軍なので大した損害ではない。


 うちの兵がある程度活躍してこちらの死者を減らした上に敵には十倍近く損害を与えているのでむしろいいほうだ。

 今は両軍にらみ合いが続いている。


「しかし妙だな」


「Lランク級の敵戦力の存在が気がかりですか?」


 ロメイアはおそらくLランク以上の力は最低でもある。

 そのロメイアを討つ為の敵主力には少なくとも一匹はLランクのモンスターが入ってると考えるのが普通だ。


 しかしそのLランクモンスターは今まで姿どころか気配も出していない。







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