第165話

 妖精の剣は一振り云々の伝説があるから、それが本当だったというだけであまり驚かないが、それに対して少しの補助のみで張り合えるマスターソードに俺は泡吹きそうだ。


 その後も俺とマスターソードが何度も斬撃を放つ、しばらくして剣と鎧の魔力が無くなって休憩を挟まなくてはいけなくなった。


 モンスターたちは斬撃が来なくなると好機と見たか前進してきた。

 だが流石に弓を警戒している。大柄なモンスターを前衛にしてこちらの矢があまり意味をなさない。


 もしかすると物理耐性のあるモンスターが混ざってるのかもしれない。

 これは休憩もそこそこにしなければと思い、腰を上げるとモンスターの一角だけ妙に削れていることに気づいた。


「なあマスターソード、あそこだけいやに脆くないか?もしかして誘い込みを狙ってるのだろうか?」


「あ?あぁ。あれはうちの弓部隊だな。適当に聞き流してあまり覚えてないが、何か特製の弓で並のやつじゃ矢をつがえることすら難しいらしいぞ」


 めちゃくちゃ弦が硬いってことか?それとも弓がスライムでできている?

 そういや全員アダマンタイト装備だし、孔明は一体どんな軍隊を作ったんだ?

 なんにせよこの機を逃すものか。


「妖精族の弓兵はエスリメ軍が開けた敵の穴に撃ち込め!エスリメの弓兵は他のところを撃って穴を増やせ!」


 この撃ち方に変えると、先程より倒せるモンスターの数が格段に増えた。

 しかしまだこちらに前進してくるモンスターの数は多いので油断はできない。


「なあマスターソード、あいつらには指揮官いるよな?」


「動きを見る限りはな。指揮官無しであの動きをできるとしたらあの集団が一匹のモンスターということになる。じゃないと組織だった動きに説明つかないからな」


 それはないだろう。

 てことはやはり敵には指揮官がいる。だったら人間の軍と同じような戦い方ができるってことか?試してみよう。


「敵モンスターを殺さず足や腕を撃って戦闘困難な状態にしてくれ。ナメクジみたいなやつは狙い辛いから殺してもいいぞ」


 俺の言葉にくすりと笑ったエスリメの弓兵の何人かを使ってモンスターを戦闘不能にさせると、別のモンスターがそいつらを引きづって集団の奥へ消えていった。


「負傷した味方は助けるか。まあ、外だと戦力は有限だから流石に使い捨てにはしないだろうな」


 野生のモンスターと違って理性のある指揮官がいる分、戦法が人間に近くなってる。


 エスリメだったら、分裂可能なスライムを捨てごまに使うくらいはできるが敵にとっては、魔法無効の貴重な戦力は大切にしたいだろう。


 ここで敵のDP事情の予想を説明しよう。魔法無効と物理耐性持ちのモンスターは高額でいくらランキングで2桁だとしても無限に召喚できるわけではない。

 回収できるなら回収しときたいだろう。


「だが、これで敵の動きがばらつき始めた」


 矢の雨をくぐり抜けて砦に取りつこうとするモンスターたちは10〜20匹の少数のグループが断続的に来るので、近づいてきた途端にこちらの兵が袋叩きにしている。


 アダマンタイトチートなエスリメと違って、普通の装備である妖精族の兵士たちに多少の被害が出ているが死者は居ない。上々の出来だ。

 これならしばらくは、俺とマスターソードはゆっくり休憩が取れるだろう。








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