第164話

「ところでマスターソードはどうしてこっちに来たんだ?ダンジョン防衛だと思ってたんだが」


「コーメイが独自にアンチマジックダンジョンについて調べてたらしいがあのダンジョンは、未踏破区域に行くと物理耐性のあるモンスターが多く出てくるらしい」


 魔法無効化対策で物理パーティーで奥に行くと痛い目見るってことか。いやらしい造りのダンジョンだな。


「俺様なら問題なく切れるだろうがコーメイにこっちに行ったほうが効果的だって言われたんだよ」


 最初は俺だけでエスリメ軍を率いるつもりだったからマスターソードがいてくれるのはありがたい。


「作戦書だと俺がエスリメ軍主力の大将をして、マスターソードは騎兵千を使って奇襲か。戦果を期待するぞ」


「へっ、当たり前よ。無敵のマスターソード様に任せとけ」


 マスターソードが来た三日後の昼に、ニアラのダンジョンを監視していた兵から、ダンジョンから大量のモンスターが出てきたと急報が届いた。


「そんなバカな!」


「決まりですね。約束なので我が軍師の作戦に従ってもらいます」


 シャクリーンはうらめしそうに俺を見てくる。

 最初に言い出したのはお前だろ…………そんな目で見てくるなよ。

 準備をしてすぐ俺たちは妖精族の武官たちと一緒に前線の兵たちのいる砦に合流した。


「こりゃ壮観だな」


 砦と向き合って並んで陣を作る数え切れないくらい大量のモンスター。

 こいつらが魔法に耐性を持ってると冗談抜きに妖精族の大陸は滅ぼせる。

 妖精族はどちらかと言うと魔法の方が得意なのが多いからな。


「ユースケ殿」


「はい。三日間程よく戦って、後退してモンスターを引きつけましょう」


 ただし、もう少しだけダンジョンから敵を引きずり出したい。

 一戦目にこちらの全力の攻撃を食らわせて敵が増援を送らなければと思わないといけない。


「俺とマスターソードが魔法を使って敵に斬撃を飛ばします。砦の皆さんは我々の魔力が尽き、休んでいる間に弓で攻撃してください。我々の手勢と弓が苦手なものは打ち漏らして砦に近づいてきたモンスターの対処をしてもらいます」


 妖精族の指揮官たちと作戦の確認をして全員が配置につくのを待つ。


「魔法で斬撃を強化した上で飛ばす。坊主は戦略兵器だな」


「素で斬撃飛ばせる化け物が何言ってんだよ。俺の鎧が合図を出すからその瞬間斬ろよ」


 俺には剣が、マスターソードには鎧がそれぞれ魔法をかけてくれる。

 鎧は攻撃系の魔法が苦手なので攻撃範囲を広げるだけで良いマスターソードを担当させた。


『いきます3、2、1、今です!』


 鎧の合図と同時にマスターソードが砦の上から剣を大きく振ると、三日月型の斬撃が飛んでいって、敵のど真ん中に直撃した。

 多分数百体は倒しただろう。


『ううむ、主よ。これは負けられませんな』


 いやいや、何で戦略級個人に対抗しようと思ってんだよ。

 俺はまだ素のスペックは人間の範疇だからな。


『魔法はかけ終わりましたぞ。いつでもどうぞ』


 俺はマスターソードが狙った真ん中よりも手前に向けて剣を振るった。

 マスターソードと同じように三日月型の斬撃が飛んでいき、何故か直撃した後に爆発が起きた。

 は?なんの原理で爆発したんだ?


「おい」


『おお!やりましたぞ!昔の主が言っていたのです。こっちの方がかっこいいと』


 完全に魔力の無駄遣いじゃねーか!

 爆発で死んだモンスターは数匹しかいないぞ。


 しかし、演出としては良かったのか砦の兵たちはまるで勝利したかのような鬨の声をあげた。


「戦略級の働きをする個人が二人、後の歴史家はこの戦いの真偽に頭を痛めるだろうな」


「だったらちゃんと映像として残してやるさ。それはそれで泡を吹くやつも出てくるだろうけどな」






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