第167話

「何か余裕でもあるのか。それとも限界までLランクを温存するつもりか」


「なんにせよ、マスターソード様の攻撃で何らかの動きは見せるでしょう」


 両軍か睨み合ってる中、敵右翼軍の中に千の騎馬隊が突っ込んでいった。

 森の中からいきなり現れたから、敵軍にとってはいきなり敵が現れたように見えるだろう。


「今だ!敵は別働隊によって撹乱されている。全軍突撃ー!」


 俺の号令で全軍が的に向かって突撃する。

 しかし、妖精族の兵士たちが少し遅れていた。

 俺に従うのに反抗しているのではなく単純に練度の差だろう。


 エスリメ軍は全員戦争ばかりしていたウォルテニアの軍人で構成されていて、エスリメ軍として再編されてからもマスターソードと孔明が軍事演習を十分にしていたそうだ。


 しかし、妖精族の軍は戦争なんてまともにしたことないし、半数は普段は一般市民として暮らしている。急な動きにはついてこれないのも無理はない。

 兵農分離だっけ?大事だなぁ。


「聞け!エスリメ軍。ここは異国の地だがここで最も強い軍はお前たちだ!敵を蹴散らすぞ!」


「うおー!」


 敵との距離が詰まってきたところで、俺が声を上げてエスリメ軍を率いて敵の中に食い込んだ。


「これでもまだ動かないか!」


「戦闘向きではなく、軍を率いるのが得意なタイプということでしょうか?それでもLランクならばかなりの強さがあるはずなのでこの劣勢を何とかするために自ら動くはずなのですが……」


 俺が副官と話していると、マスターソードの兵士たちが次々に吹き飛ばされ始めた。

 アダマンタイト装備だからあれくらいでは結構痛いが死なないはずだ。

 しかし、放っておくと、着地点でモンスターたちにタコ殴りされてしまう。


「あれは!?」


「俺が助けに行く!ここの指揮は任せる!」


「は、はっ!お気を付けて!」


 副官に指揮を任せて俺は鎧と剣の魔力を使いながら敵の中を突っ切った。

 無双ゲームをやってるみたいだとくだらないこと考えている間に、吹き飛ばされたマスターソードの隊員のところへ行く。


「おい、立てるか!」


「ユ、ユースケ様!?どうしてこのような危険な所に」


「早くお逃げください!」


「マスターソードの隊だろうとお前たちはエスリメ軍の一員だ。ならば、一人も欠かすことなく国に返すのが俺の責任だ!」


「ユースケ様…………」


 脱落した兵たちを一人一人拾いながら百人程度の歩兵隊として敵中を猛進しながらマスターソードの元へ向かう。


 俺を守るために士気が高いのと、全員アダマンタイト装備じゃなかったらこんな無茶な突撃はできなかっただろう。


「オォラァ!…………マスターソード!隊員を拾ってきた…………ぞ?」


「ひーん!なんで全員アダマンタイトの装備してるの!?こんなの勝てるわけないよー!」


「もはやここまでか、無念」


 分厚い敵の壁を抜けて、俺たちがようやくマスターソードの隊と合流すると、マスターソードが二人の妖精族を何故か降参させていた。


「お、おい。マスターソード、何やってるんだよ?」


「おお坊主。俺様の隊員を助けてくれたのかありがとな。こいつらはその隊員たちを吹き飛ばした張本人だよ」


 本当かと隊員たちを見ると全員首を縦にふる。


「てことはこいつらはダンジョン産の妖精族ってことか」


「いかにも。ダークエルフのジラード」


「シルフのタマリですぅ」


 ジラードとタマリは俺たちと同じく全身アダマンタイト製の装備を身に着けていた。








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