第162話

 ソランたちと死体を集め終わってしばらく待つと泣きすぎて目の腫れた子供たちが外に出てきた。

 死体を見て足を震わせている子供たちに俺はシャベルを渡した。


「これは?」


「墓を作るんだ。俺たちも手伝うから」


 無言で穴をほって死体を入れて埋めるという作業は数時間続いた。

 子供たちは、顔を歪めさせながら穴を掘る。しかし、これは彼らが家族の死を受け入れるために必要なことだ。


 墓をすべて作り終えて、俺は死体がアンデット化しないように地面に聖水をふりかけた。


「お前たちはこれからどうする?俺たちについて来るか、ここで暮らすか。他に案があれば言ってくれ。俺にできる事ならしてやる」


「…………お願いします。連れて行ってください」


 子供たちが自分の両親の墓に最後の別れを告げるのを待って、俺たちは城に帰った。

 レジムに頼んで子供たちの部屋を確保し、村で起きたことを報告した。


「数十匹のモンスターが群れていたことがなかったので油断していました。軍の方に言っておきます」


「それと、子供たちと話して決めたのですが彼らは、俺の養子にすることにします」


「本人たちの意思ならば止める理由はありません。念の為に明日確認させていただきますが」


「無理を言ってすいません」


「いいえ。本来は我々が彼らの後見をしなければならないのです。このくらいは」


 この件は完全にロメイアたちの落ち度だ。実際に子供たちを助けた俺たちと、被害を受けた子供たちに強く出ることはできまい。


 それから数日、何事も無く過ごしていると………………いや、一回だけ俺が爆裂して死んだな。間違い無くダンジョンの俺に何かあったはずだ。蘇生アイテムを持っていたからいいものの、持ってなかったら共倒れだった。


 ダンジョンの俺は俺とダメージを共有していることを忘れてるんじゃないのか?

 なんとなく思ってたがダンジョンの俺って頭悪いのか?


 ヴァイオレットたちの目の前で爆裂したから彼女たちは驚きでとんでもない顔していた。そりゃ目の前で人がいきなり爆裂したら驚くわな。みんな面白い顔だった。


 さて、そんな事はいい。いや良くはないんだが話を進めよう。

 ヴァイオレットたちが父からパーティーの日時を伝えられたらしい。


「俺の扱いはどうなるのだろう?」


「うーん、ダンジョンのあなただけ呼ばれるか、両方呼ばれるか。当日にならないと分からないわ」


「そうか。それじゃあ俺にはニアラと養子関連のことは黙っててくれ。絶対にうるさいから」


 俺が知ったら絶対小言を言ってくることがわかるソランたちは苦笑いで了解した。

 ソランたちがパーティーに行った日、やはり俺は呼ばれなかった。


 一人では仮に行ってはいけない俺は暇になったのでロメイアに連れられ、フェアリースを散策することになった。


「あれは何だ?」


「ロメイア焼きなの」


 ロメイア焼きはフェアリースの名物でしっとりした生地にほんのりとした甘味のあるロメイアの形をしたお菓子だ。

 甘味はこの世界では珍しいな。旅をしていて初めてであった。


「主を焼いたり食べていいのか…………?」


「ロメイアがオッケーしたから問題ないの」


 そんなもんなのか…………ユースケ焼き、だめだな。他人が俺をパクパク食べてるのを想像してみたがなんか嫌だ。


「ダーリンの国の安い砂糖を使うことで前より甘くなったの。ダーリンは妖精族の子供たちの英雄なの」


「そんな大袈裟な」


 そこまで言いかけて考えた。特に子供時代ってのは無意識にお菓子を求めるものだ。

 この世界ではお菓子、特に甘味は少ない。糖はエネルギーの塊だから人間なにかする時はそれを分解してエネルギーとして使う。


 この前孔明から報告が来てたがエスリメとそれ以外の子供の基礎能力に差が出てき始めているとあった。


 エスリメがきちんとした教育機関があるからだと思ってたが栄養が十分に体中に回ってるということも要因の一つなのかもしれない。


「どうしたの?」


「いや、何でもない。城においてきたガキ共にも買っていってやるか」


 城の子供たちには既にエスリメのお菓子を与えてるからこれじゃ物足りないかもしれないけどな。

 ロメイア焼きを買って後ろを見ると、ロメイアは消えていた。


 まさかニアラに誘拐されたか!?今ロメイアが居なくなればまっ先に俺が疑われる。そう思って慌てて探すと、彼女は空き地で子供たちと追いかけっこをして遊んでいた。







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