第158話

 絶対に代えの効かない装備か、後数百年は国庫を潤すことのできる宝か。

 そこまでなら悩みどころだが今回の戦での出兵を約束に入れることで後者に天秤を傾けた。


「別に今すぐ返事を出せというわけじゃありません。ロメイア、このスクロールを使え」


「これは?」


「アイテムボックスの魔法のスクロールだ。俺は鎧と剣がどうしても欲しい。だからロメイアには剣と鎧、俺はこの財宝をアイテムボックスに入れる。これで俺はそっちが剣と鎧を持ってるから財宝を持ち逃げできず、ロメイアたちは俺が財宝を持ってるから俺から剣と鎧を強制的に没収できないってわけだ。もちろんそちらが剣と鎧を選べばアイテムボックスの中身はそのまま。信じる信じないなんて口約束じゃなく、契約にしよう」


「ダーリンは頭いいのー」


 ロメイアは素直に俺に感心するが後ろの家臣たちは苦い表情。

 ふん、そう簡単に二兎を得れると思うなよ。


 とりあえずそこで場は解散して、ロメイアに剣と鎧を渡して、俺は財宝をすべてアイテムボックスに収めて貯金箱を出ると、扉は自動で閉まった。メーターは真っ黒になってる。


 しかしアイテムボックスの容量の底が見えない。多分この魔法、この世界のじゃなくてMade in縁先輩だな。

 あの人の事だから容量無限でも驚かない。


 何となくアイテムボックスの中の財宝を見てると、アイテムボックスのスクロールがあった。

 俺のと見た目がどう見ても違うので予想はあってるっぽいな。


「あのー、ユースケ殿」


 城に戻ってる途中、ブラウニーの家臣が俺に声をかけてきた。

 俺の記憶が正しければ歴史関連の大臣だ。


「何でしょう?」


「実はお願いがありまして。財宝の一部を見せていただけないでしょうか?」


 ブラウニーのトリアが言うには財宝の中に、ぱっと見ただけでも長い歴史の中で紛失したと記録されている芸術品などがあったらしい。

 ほぼ確実に妖精族側に財宝が渡るだろうが待ちきれずに俺に直談判しにきたそうだ。


「構いませんよ。では俺の部屋で見せましょう」


 トリアは俺の隣を歩くが足音が聞こえない。

 彼の足を見ると、彼は裸足で足の裏に毛が大量に生えていた。

 多分そのお陰で足音がしないんだろう。


「ソラン」


「は」


「孔明に現状の報告。戦力派遣の人員編成をするよう言ってくれ。もちろん俺には言うなよ」


「分かりました」


 ニアラのモンスターと俺が戦うとすると、ダンジョンバトルに発展する可能性が高い。

 孔明なら現状を伝えるだけで作戦を考えてくれる筈だ。


 俺がダンジョンの外にモンスターを誘導してバトルを翌日にでもしていすれば、戦力の二分ができる。


 Lランクモンスターが敵ダンジョンにいたとしてもマスターソードとダンジョンマスターがたくさん居るから、そこまでしとけばまあどうにかなるはずだ。


「本当に兵を派遣してくださるのですね」


「一応国王ですから。約束は守ります」


 ただ、癪だがダンジョンの俺から借りる戦力だから極力死者を出さないように気を付けなければ。

 俺は俺に借りを作りたくない。

 いざとなれば妖精の剣と鎧で無双してやる。


『お任せください!』


『痛いのはちょっと……はっ!頑張るので無能鎧だけは』


 アイテムボックスの中から声を届かせられるのか!?

 …………剣と鎧を返してもらったら適当なモンスターで使い心地を見とくか。

 部屋に着き、トリアに一つ渡して見ては返して貰いを繰り返す。


「何故一つずつ?」


「気を悪くしたらすみません。無いとは思いますがトリアさんが盗めないように」


「トリアで良いですよ。ちゃんと管理してくださってる事が分かりましたから気を悪くするなんてありえません。むしろ安心しました」


 トリアはにこりと笑ってただ、と一言付け加えた。


「ブラウニーは本能的に手癖が悪いので、この方が最初から盗むのは無理なのが分かってるので、私も鑑定に集中できます」


 自分で言うことかそれ?

 本能的にか……足音がしないのも見方を変えれば盗みがしやすいとも言えるな。

 ブラウニーとぶつかったらスられていないか注意しないとな。









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