第151話
「皆、ダーリンのこと知ってるの?」
金平糖を口いっぱいに頬張りたいからか、フェアリー形態になったロメイアがのんきに言った。
「ロメイア様、こ奴らは先日、神聖国ウォルテニアと戦争をして、かの国を滅ぼした国の者たちです。ダンジョンマスターです。危険ですからこちらに来てください」
「ここまで連れてきておいて危険もなにもないだろう」
「んー、あっちこっちで戦争をふっかける神聖国ウォルテニアをやっつけたんならいい人たちなの」
ロメイアがまさかのド正論を言ったため、どちらも口を閉じる。
しばしの沈黙。
「それにさっきはモンスターから助けてくれたの。命の恩人なの」
「しかし……」
「お客様と旦那様なの」
ロメイアが少し声を低くした。もしかして怒ってんの?
そんなロメイアの命令にこれ以上抵抗できず、大人しく兵を引かせ一応の謝罪をしてきた。
「申し訳ない。して、あなた方はなぜこの城へ?」
「俺たちも自分の立場は理解しているので気にしないで下さい。そもそもロメイアに連れて来られなければここまで来ませんでしたから」
「でもダーリンと」
「ロメイアが勝手に言ってるだけです」
「違うの。ダーリンとロメイアは結婚するのー。絶対に返さないの」
「こればっかりで」
俺の頭にちょこんと座ってワガママ言いたい放題なロメイアにため息をつくと、臣下の一人のシルフの男が手を上げて発言した。
「ロメイア様がそこまで言うのなら城に滞在して頂きましょう。お部屋にご案内致します」
「あ、そうなるの?」
この人らは基本的にロメイア優先だから俺たちの都合は考えてくれないようだ。
逃げだせば妖精族全員が追手になるだろう。ここは大人しく従っておこう。
「ロメイアも行くのー」
「ロメイア様はこちらで留守にしている間に溜まったお仕事です」
「なのー!」
「ロメイア様を助けていただいてありがとうございます。私は外交を担当しているシルフのレジムと申します」
案内されて廊下を歩いているときに唐突に自己紹介をされた。
シルフはエルフに羽が生えたような種族だ。
彼らは妖精族の中で最も早く飛ぶことができる。
羽の構造が風を掴みやすいらしい。
「いえ、偶然通りかかっただけです。気にしないで下さい」
「偶然、ですか……」
「何か?」
「いいえ、何でもありません」
絶対に何でもないこと無いだろう。明らかに何か含みを持った言い方だぞ。
「俺たちは世界中の様々な種族の生活、文化を見て回る旅をしている最中だったんですが……いつ解放していただけるのでしょうか?」
「逃げるのなら、ロメイア様に納得してもらってください。あなたも妖精王と敵対する意味は、わかるでしょう?」
ロメイアに気に入られたのが運の尽きってことか。
だったらもう前向きに考えていこう。妖精の鎧と盾の情報を聞くことができるからちょうどいいじゃないか。
城に入れてもらえたんだから、あとは適当な人に聞くだけ、簡単じゃないか。
「それと一つ忠告を。我らはロメイア様を敬愛しております。中にはあの方を思うあまり、近づく男を亡き者にしようと独断で行動する過激派もおりますので、暗い所では一人にならないことですな」
「俺を殺すとロメイアが哀しみますよ?」
「今は哀しくとも、後のロメイア様の為になると考えれば己の命を喜んで差し出せるのが妖精族です」
妖精族怖い。
俺が顔を少し青くしたのを見て、レジムはくすりと笑った。
「逆に私のようにあなたとロメイア様を応援する者も少なからずいるのでご安心下さい」
どっちにしても俺には迷惑なんだよ。どうしたもんか。
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