第152話

 案内された部屋は、男部屋と女部屋の二部屋だった。この世界ではかなり高級な部類の家具が揃えられていて、一応もてなされていることは伝わってきた。


 ただ、馬車の方が快適なので、後で布団は持ってこようと思った。


「それでは私は会議がありますので失礼します。御用の際はそのベルを鳴らしてください」


 レジムが出ていったのを確認して、俺はソファーに体を沈めた。


「はーあ、まさかこんな事になるなんて……ジョーカーを先行させて助ければよかったかな?」


「くく、それだと逆に私がロメイア殿に敵だと思われて攻撃されますよ」


「ユースケ様、これからどうするのですか?」


「ソランは何をすれば良い思ってる?」


 俺の質問返しにソランは、顎に手を立てて少し考え込んだ。


「そうですね……ユースケ様はロメイア殿から妖精の鎧と盾の情報を聞き出してもらって、我々はロメイア殿の家臣がどうして我々をあそこまで敵視したのか探りましょうか。先程、ロメイア殿に懐かれたユースケ様だけでは無く、我々もかなり警戒されていました。予想ですが彼らは我々を、エスリメ国ではなくダンジョンマスターとして見ていたのではないでしょうか。ユースケ様の顔を見るだけで分かるほど調査をしていたのならば、我らの国の事はかなり詳しいはず。そしてエスリメは他国に対しては友好的な国をアピールしています。それなのに、先にダンジョンマスターとしての危険性が出たとすれば、どこかのダンジョンマスターが国盗りでも企てて襲ってきている最中なのかもしれません」


 なるほど他のダンジョンマスターの仲間だと思われている説か。

 全種族共栄を目指しているエスリメとして見られていたら、ここまで疑われないだろう。


「やるなソラン、俺と同じ考えだな」


「ならば決まりですね」


「ああ、皆は他の線も考えつつ、ソランの予想の証拠を掴んでくれ。俺は、ロメイアから鎧と盾の情報を聞き出してみる」


「はっ!」


 これぞ孔明から教えてもらった、俺も同じ考えだった戦法だ

 先に部下に話させて良案が出たら、俺も同じ考えだと言うと、その案は俺の案になるのだ。


 王が頭が悪いと外聞が悪いのでこれはかなり役に立つ。

 頻繁に使うのが出来ないのが弱点だが、今回は上手く決まったほうだろう。


「ユースケ」


「何?」


「食事に毒が盛られるかもしれないから気をつけて」


「ちゃんと蘇生アイテム持ってるから大丈夫だよ」


 食事か……危ねえ、全く警戒してなかったぜ。

 蘇生アイテムは持ってるけど毎回死ぬのは嫌だな。かと言って食事前に毎回解毒ポーション飲むのも嫌だ。あれ死ぬほどまずいんだ。


「…………よし、思いついたぞ」


 とりあえず男女の部屋に分かれてのんびりしていると食事の呼び出しがかかった。

 どの食事に毒が入っていても良いように鑑定眼鏡を掛けていく。まあこの心配が杞憂で終われば必要ないが一応な。


「待ってたのダーリン。こっちなの」


 細長い長方形のテーブルには美味しそうな料理が所狭しと並んでいて、テーブルの上に置かれた小さな椅子に座っているロメイアが自分の後ろの椅子を指差した。


 俺が上座?並びは俺、ロメイア、、ロメイアの家臣、俺の仲間の並びだ。

 俺とロメイアの料理の量の差がない。彼女は小さいままなのに食べられるのか?


「おいロメイア、そんなに食えるのか?」


「余裕なの」


 どちらのサイズでも食べる量は同じらしい。

 明らかにフェアリー形態のロメイアの体積より料理が多いけどな。


 さて、念の為料理を鑑定メガネで…………お、おう。全部毒入りね。

 毒マシマシとかで注文したかな?


 冗談はさておき、殺意高すぎだろ。

 ヴァイオレットたちには盛られてない。リーダーの俺さえ殺せば何とかなると思ってるのだろうか。


「どうしたのダーリン?」


 唐突に俺が涙を流したのを見てロメイアはあたふたとしながら聞いてきた。

 あ、もちろん嘘泣きです。


「いや、やはり俺は歓迎されていないらしい。もうお暇させてもらう」


 席を立った俺をロメイアは、慌てて大きくなって捕まえた。


「どうしたの?ロメイアたちはダーリンを歓迎しているの」


「だったらどうして食事に毒が盛られるだろうか。扉の外も殺気が甚だしい」


 俺が扉の外に待機させてある兵の存在を見破っていたことに気づき、何人かの家臣がドキッとした表情をした。


「毒?みんながそんな事するはずがないの。さっきのシャクリーンの態度が気に入らないの?だったら謝るの」


 俺が何も言わずに首を振ると、なんとロメイアが自分で毒味をすると言い出した。


「ロメイアのお城の料理は美味しいの!ダーリンにも食べて欲しいの」


 ロメイアがフォークを使って肉を口に入れようとした瞬間、シャクリーンが彼女の腕を掴んだ。


「ロメイア様!?」


「…………シャクリーン?」


 ロメイアはシャクリーンの切羽詰まった顔と食べようとしていた肉を交互に見て、俺が言っていたことは事実であることを察し、泣きながら部屋を出ていってしまった。








============================




もしも少しでも面白いと思ったら、フォローやレビュー、応援をしていただけると、非常に励みになります。よろしくお願いします!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る