第149話

 フェアリーの声に気づいた皆が彼女を見る。すると、イーナ、ジェイ、ソフィア、フィー、ピクリナの妖精族5人があんぐりと口を開けた。


「妖精王様!?」


 はぁ?これが妖精王だと…………フェアリーのロメイア、あっ、確かにそんな名前だったな。


「エルフにドワーフにフェアリーなの?それに天使に獣人に魔族…………変わった組み合わせなの」


 ピタリとロメイアは止まり、訝しげに馬車の面々を見た。翼を出していないソランの種族に気付けるとは、妖精王恐るべし。

 王様ならこの面子に危機感を感じて逃げてくれるか?


「さっすがダーリン!顔が広いの」


 馬鹿かこいつは!

 もうちょっと王として自分の安全を確保しろよ!こんな多種族混成の集団怪しさしかないだろう。

 そして思い出したかのように金縛りし直すな!


「ユースケ様、一体どんな状況ですか!?」


「俺が知りたいわ!」


「様?お友達じゃなくて家来なの?私と同じでダーリンも偉いの」


 まさしくカオスだ。

 各々が自由に発言するからまとまらない。

 ……あれ?


「イーナ、お前フェアリーだよな?」


「はい」


「なんで二人は体の大きさがそんなに違うんだ?」


 イーナは俺たちと同じ成人サイズだ。しかし、ロメイアは掌サイズ。ロメイアの方が俺の中のフェアリー像に近い。

 そもそもイーナがフェアリーだって気付かなかった理由もそれだしな。


「フェアリーは変身する種族なんですよ。今の私は力をセーブしている状態、そしてこちらが……体内に分散している力を凝縮した状態です」


 イーナの体が光りみるみる小さくなっていき、ロメイアと同じ掌サイズになってアキトの肩に乗った。


「ただ、こちらは常に魔力を消耗するので私が連続して変身できる時間は3日が限度です。ウ〇〇ラマンみたいなもんですね」


 その例えでいいのか?


「小さなイーナも可愛いな!肩乗り彼女だ」


「うふっ、ここから見るアキトも凛々しくて素敵よ」


 説明を終えると二人でいちゃつき始めた。

 俺の目の前では初めてだな。

 それにしてもダンジョンマスターに選ばてるほどのイーナですら3日が限界なのか。


「ロメイアはどれくらいの間その姿になれるんだ?」


「大きい魔法を使わなかったらずっとなれるの。ロメイアは凄いの」


 この無尽蔵の魔力も彼女が妖精王に選ばれた理由の一つらしい。

 あのナメクジ魔法無効か?いくら相性が悪いからってこれだけの力があるのにピンチになったのか。


 …………逃げるって発想なかったのかな?…………お馬鹿なんだろうなぁ。


「うーん、でもさっき魔法を打ち過ぎた上にダーリンを縛ってるから魔力が足りなくなってきたの。久しぶりに大きくなるの」


「は?めっちゃ美人じゃん」


 イーナとは逆に光って大きくなったロメイアは先程までのフェアリー形態の幼女体型とは大違いの出るとこは出てて引っ込む所は引っ込んでるグラマラスお姉様になった。


「そうなの。ロメイアは美人なの!さあ、一緒にお城に行くの」


 身動きできない俺の腕を掴んでロメイアは彼女の豊満な肉体を擦り付けてきた。

 どこがとは言わないが当たってる。

 へぇ、本当に柔らかいんだな。


「しばく!」


「お待ちくださいヴァイオレット殿!あの姿でも我々では勝てません」


「ククク、修羅場ですねぇ」


 急に怒り狂ったヴァイオレットをソランとジョーカーが二人がかりで抑えた。

 ハッ、なんだろう、人生で勝ち組になった気分だ。


「だが断る。俺たちは旅の途中なのだ」


「一緒にお城に来ないならずっと動かさないのー」


「ふっ、俺に逆らうすべは無いな」


「諦め早くないですか!?」






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