第148話
ある日、俺が御者台にいる時、同じく隣に座っていたピクリナが悲鳴のような声を聞いたと報告してきた。
「どっちだ?」
「あっち。2キロメートル先」
「2キロ!?エルフの耳はすごいなぁ」
ピクリナの指差した方向は獣道ならぬモンスター道があった。
なぜモンスターだと分かるのかというと、変な粘液が道にあるから。
粘液を出す巨大生物はモンスターしかいないだろう?
「ピクリナは中のみんなに知らせて馬車でこい。俺が様子を見てくる」
「分かった」
アダマンタイトアーマーを装着して不意打ちを受けないように、木の枝から枝へと飛び移りながら俺は、ピクリナの言った方角を走る。
「痛て!」
湿った枝に滑って地面に転げ落ちる。くそっ、締まらないな。
モンスター道を辿って数分後、女性の声が聞こえてきた。
「きゃー!こっち来んなのー!」
声の方向へ向かうと、ナメクジのようなモンスターにやたらめったら魔法をぶち込む掌サイズの羽の生えた人間、おそらくフェアリーの女性が居た。
だがナメクジのモンスターには魔法が効かないらしく、ズルズルと迫ってくる粘液お化けに涙目になっていた。
「こっちだ、ヌルヌルお化け」
来る途中で枝から滑り落ちた時に拾っておいた小石を投げてナメクジの注意を引く。
ナメクジに投げる前にやつを油断させる為、鎧を脱いでいるのでナメクジにとってはより大きくて無防備な獲物が出てきたと奴は喜び体を震わせた。キモい。
「よーし、ついてこい…………今!」
ギリギリまで引きつけて再び鎧を装着し、ナメクジを真っ二つにした。
2つに分けられてもグジュグジュとうごめく。
不快害虫だ。
「おらおらー!塩喰らえ」
1キロ入ってる塩袋を3つ取り出してナメクジにかけるとみるみる小さくなっていった。
モンスターでも塩掛けて水分抜けるんだな。止めに俺は更に1キロの塩を出して塩で埋めてやった。
「よーし、終わり。大丈夫か?小さなお嬢さん」
キザっぽいセリフを吐いてみたら、少女はぼーっと顔を赤くして俺を見つめる。
「好きぃ」
「は?」
何言ってるんだこの子は?ご病気か?
「好きなのぉ。白馬の王子様なの」
「いやいやいや!白馬でもないし王子でもないから。そもそもそんな表現されるほど見た目が整ってるわけでもないから!」
言う相手によっては悪口だからな。
…………白馬の王子様って言葉こっちにもあるの!?
どの世界でもイケメンといえば白馬に乗ってる王子様なのだろうか。まあ、少なくともブサイクな要素は無いな。
「絶対に一目惚れなの。いま心臓がバクバクしてるのがその証拠なの!」
違うぞー。今までモンスターに襲われてた恐怖の鼓動だぞー。
「ほら、聞いてほしいの」
フェアリーは俺の近くまで飛んできて体を俺の耳に当ててきた。トットットッと速い心拍が聞こえた。
だからこれ吊橋効果でしょ!
「胸が耳にあたってるの。ダーリンのエッチ!」
ペチッと小さな手で叩かれる。
当ててきといてエッチと言われたらもうどうしょうもない。
てか、さり気なくダーリン呼びかよ。
「まあいいさ。もうモンスターに襲われるなよ」
「え、もう行くの?」
「仲間をまたせてるのでな。それじゃ………………おい!」
面倒なのでさっさと立ち去ろうとすると何かの魔法だろうか。体をガッチリと捕まえられた。
アダマンタイトアーマーをオートモードに切り替えたがそれでも動けないという事は普通の金縛りじゃないな。
…………ん?おい、オートモードは十トンくらいなら軽く持ち上げられるんだぞ!
もしかしてこいつ、相性の関係でナメクジに勝てなかっただけで実はめっちゃ強いのか?
「離せよ!」
「嫌なの!王子様はどこにも行かせないの。ずーっとそばに置いてイチャイチャするの!」
「勘弁してくれ」
てか王子様って言わないで!
「ユースケ様ー!」
後ろから馬車で追いついてきたソランの声が聞こえた。
た、助かった。
「ダーリンのお友達なの?ご挨拶するのー!」
「あ、おい待て!」
フェアリーが馬車の方へピューッと飛んでいったことで、金縛りが解けた俺も慌てて彼女を追いかけた。
「はじめましてー、ダーリンのお嫁さんのロメイアなのー!」
「やめろってー!」
フリーダムすぎるだろこのフェアリー!
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