第146話
二人と別れて、次は農業区画へ行ってエルフたちの様子を見に行く。
「おや、ユースケ殿ではありませんか。本日はどういったご要件で?」
「いや、ただ散歩してるだけ…………にしてもエルフの皆さんずいぶん変わりましたね」
エスリメに来た頃はエルフの民族衣装を着てツリーハウスに最低限の家具だけで生活していたのに、今では地上に家を建て、現代の若者が来ていそうなカジュアルな服を着ている。
更にはスマホ片手にテレビやパソコンを家にニ、三台設置している。
人族よりエスリメに順応してる。
「エルフって森に生きる種族でしたよね?」
「森の中で生きてるじゃありませんか」
何かジャングルの奥地でハイテク技術を扱う部族を思い出した。
農業区画から水産業区画に行くと、ウンディーネたちは半分近く居なくなっていた。
「他のウンディーネたちはどこへ?」
「街に引っ越しましたよ。あっちの方が何かと便利だからって」
それでいいのか妖精族?
工業区画に行くと、流石にドワーフたちはここで鍛冶や細工の作業をしていた。
「キンキンいやー」
電車とかは大丈夫なのに工具の立てる金属音を嫌ったジーナが耳を塞ぎながら俺の手を引っ張り早くどこかに行こうと言ってきた。
「分かったよ。それじゃあ帰るか」
「かえるー」
多少想定外なこともあったがエスリメの国民たちは幸せそうに生活していたから良しとしよう。
Side旅雄亮
温泉につかってのんびりしたりして旅の疲れを落として続報を待っていると、一日も経たないうちにスライムからエスリメの勝利の報がきた。
「エスリメ勝利。被害は軽微だってよ」
「おお!」
「やったわね!それにしても一日も経たないうちに決着がつくなんて、一体どんな戦い方をしたのかしら?」
俺はどのようにしてエスリメが勝ったのかをマスターたちに伝えると、なるほどと言って納得していた。
「裏切りを誘うなんて、ダンジョンバトルしか経験の無い我等では思いつくのは難しいですね」
ダンジョンバトルは互いの駒がマスターをどうやっても裏切れないからな。
「勇者を味方にしたら人間に敵はいませんね!」
「いや、世界には隠れた強者はいくらでもいる。第一セランの暴走姫が居るだろう。それに勇者の中で一番若いやつは人質救出のために手を組んだだけみたいだしな」
人を殺すのダメゼッタイ!って性分らしい。
そりゃダンジョンマスターとは合わないな。
「何はともあれ勝ったんだ。祝勝会するぞー!」
「え、我々は今回何もしてませんが」
「自分の国が勝ったんだ。祝っても構いやしないだろ」
もう一人の俺の手柄即ち俺の手柄。
エスリメの俺の勝利=俺の勝利だと言っても過言ではないと言って真面目な連中を言いくるめてその日は翌朝まで飲んで祝った。
■□■
更に温泉を楽しみ十分に落とした俺たちは旅を再開した。
ソフィアたちの村にも寄ったことだし、妖精族の大陸は後は適当に色んな種族の生活や文化を見て回ろうと思う。
「ジェイ、この剣以外でチート性能の武器や防具ってこの大陸には無いのか?」
もちろん旅の途中で追加された、他人に取られるとやばい装備探しも継続するぞ。
「そうですね……言い伝えでは、妖精の剣にはセットの盾と鎧があるとされています」
「私はこの大陸のどこかにあると噂で聞いたことがあります」
妖精シリーズってところか。全部着けたらセットボーナスでもあるのだろうか?
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