第145話

「ところで、どうして散歩をしていらっしゃるのですか?」


「俺が散歩しちゃいけないのか?」


「いえ、なにか理由でもあるのかと」


 一瞬ムカついたがソーナに言われて思い直した。そうだな。普通は国王が特に変装もせず娘と二人だけで町中歩き回らないよな。


「国民の生活を知るためだ。最近忙しくてろくに街の発展を見ていられなかったからな」


「国民に寄り添う国王様ですね!」


「ぱぱいい子!」


「建国宣言の時にでかい夢語ったからな。これくらい当たり前だろ」


「やはり我らの国王様は立派な御方だったんですね。それでは私は失礼します。協力ありがとうございました」


「え?もう良いのか?俺に関してしか話してないぞ」


「何を言ってるのですか。ユースケ様のプライベートな情報は今まで誰も入手してないんですよ。十分特ダネです!」


 確かに俺プライベートで取材受けたの初めてだな。

 家とマスターの居住区を行ったり来たりして街に出るのも久しぶりだし……何故か家には取材来ないんだよな。孔明が止めてるのか?


 思い返してみれば冒険者以外の国民に対しては、なんちゃって国王モードでしか喋ってこなかった。

 電車の乗客が驚いたのはそっちか?演説の時とのギャップに驚いたのか。


「そうか。それじゃぁな。新聞期待してるぞ」


「任せてください!最高の記事にしてみせます」


 ソーナは特ダネを掴んで意気揚々と新聞社に帰って、俺とジーナは学校区画に来た。

 学校区画は一つの校舎に校庭が一つあり、ちょうど体育の授業が行われている。


「三年B組ぃ!」


「ダンパチ先生!」


 違うな。うん、見なかったことにしよう。

 見かけた時はアホな事ばかりしているがダンパチ先生ズの担当している生徒の成績は意外と良い。なんだかんだでちゃんとした授業をしているのだろう。


 校舎の近くを歩いていると、俺に気づいた金髪の学生が二人、近づいてきて話しかけてきた。


「ユースケじゃないか。どうしてここに居るんだ?」


「イド!久しぶりだなぁ。俺は今散歩中。ミエノちゃん、こんにちは」


「こ、こんにちは」


 兄のイドと妹のミエノ、二人はジェノルムの子供で何度か遊んだことがある。マスター居住区に顔パスで入れる希少な一般人だ。


 二人共両親に憧れて将来は冒険者になりたいと言っており、俺とパーティーを組んで二、三回ダンジョンにも潜ったことがあるのだ。


「こんにちはー」


「ジーナちゃん、こんにちは」


「おう、こんにちは」


 ジーナの可愛さに二人も頬を緩ませて挨拶した。

 うちの子はきちんと挨拶できて偉いなー。







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