第142話
「ユースケ、大丈夫?」
「ああ。お前らが対抗して威圧してくれたおかげでなんとか。しかしあの爺さん相変わらずすごいプレッシャーだった…………すまん、誰か支えて」
「よっと。あの方は気に入らぬ者ならばすぐ潰しますからのう。その点ユースケ様はかなり気に入られているようですじゃ。負けても命は取られますまい。どんと構えておればいいのです」
「クククク。老師、ボスならばなんとかできますよ。とりあえずは打倒一桁です」
腰が抜け倒れた俺を支えながら老師とジョーカーは好き勝手言った。
そもそも俺はあの爺さんとは戦いたくないの!
しばらくパーティーを楽しんでいると父の声がしてランキングの書かれた巻物が送られてきた。
ヴァイオレットは少し上がって71位、ソランは112位、ジョーカーは210位だ。
一応上がってる。DP譲渡は収入に含まれないから上位陣はこんなものだろう。
だが、それ以外の奴らはモンスターや設備、宝など充実させたおかげでDP収入や殺害数が増えて最低でも中位までランキングの順位を上げていた。
教育係のジョーカーの功績だ。
さて俺自身のランキングは結構上がって162位だ。
DP収入は安定の1位でランキングを上げる要因ではない。冒険者が増えた分、事故死する間抜けが増えたからなあ。
ダンジョンバトルは下位は一回や二回勝利の同率順位が多いから一回勝つだけで結構上がる。
俺にしては頑張ってる方だろうと自分を褒めていると頭の中に声が響いた。
『ユースケ君、目を瞑りなさい』
父の声だ。他のみんなには聞こえてない。
俺を名指しで呼び出すだなんて何の用だ?
「すまん、ちょっと呼び出された」
みんなに断りを入れて目を閉じた。
目を開くと俺はパーティー会場ではなく、小さな書斎の中にいた。
「よく来たね。まあとりあえず掛けなさい」
声をかけられて初めて目の前の椅子に父が腰掛けていることに気がついた。
見た目は…………分からない。モヤがかかったように父の周りが見えないのだ。
父の姿が分からないことに驚きつつも、言われた通りに向かい側のソファに腰を下ろした。
「まずは初めまして。私はダンジョンコアの産みの親だ」
「はあ、存じてます。ところで今日俺を呼んだのはどのような要件で?」
「警告だよ」
警告?俺なんかやったか?
「何についての警告でしょうか?」
「ここからは他言無用だ。私は天界にいる神族の一人だ」
………………だろうな。としか感想が出てこない。
「この世界に存在するものにはそれぞれ担当の神がいる。私はダンジョンコア担当の神だ。すべての神がちょうどいい力関係になるように、自分の担当を管理しているんだよ」
「俺が力を持ちすぎたと?」
「そうなる。勇者担当の神と人族、妖精族担当の神、それから神器担当の神から苦情が来たんだ」
勇者は一人うちのダンジョンに住んでるし、人族と妖精族は絶賛移住中だから納得だ。
神器については知らんな。あっちの俺が何かやったのだろうか?
「だが私にはあの方に逆らう気は無いので無視している。だからもしかすると他の神が力を与えた何者かが君を狙う可能性があるんだ」
あの方?
「へー。それは馬鹿なことを考える奴がいるんだ」
「ひぃっ!縁様⁉どうしてここに」
あ、あの方って先輩のことか。
いつの間にか俺の隣で足を組んで当たり前のように座っていたのを見て父は飛び上がった。
「世界のバランスなんて遠の昔に僕が安定させている。これは君たち神族の自己満足だろ。別にバランスが崩れたとしても事象が起きたこの世界が壊れるわけじゃないのにさ。そもそもそんなデリケートな世界なら僕が彼を送り込まないよ。神たちの庭の手入れ感覚の事にこの子を巻き込むな」
「はい!誠にその通りでございます!」
なんか最近見たなこの光景。
「君から他の神に何とか言えないの?」
「奴らは縁様の力を知らないので私が注意しても聞く耳を持たないでしょう」
「ふーん…………しばく?」
先輩がニコニコしながら言うのとは対象的に父はぼやけているのに冷や汗ダラダラなのが伝わってくる。
「先輩先輩」
「何かな?」
「神が直接来るわけじゃないなら自分で何とかしてみようと思います」
いつまでも先輩におんぶに抱っこというわけにはいかない。
強敵がいた方が対魔王の爺さんの練習にもなる。
「そうかい?君がいいのなら僕がとやかく言う理由はないけど……気が変わったら言ってくれよ。いつでもしばくから」
「はい。ありがとうございます」
しばくって先輩が言うたびに父はビクッと震える。
この人といいマオといい先輩は俺の見てないところでどれだけ恐ろしいことをしてるんだ?
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