第141話

『子供たちよ。目を瞑りなさい』


 目を閉じて開くと、以前と同じ庭園へ移動していた。

 周りには先程まで一緒にいた同盟のダンジョンマスターとコアたちがいる。


「来ることができたか。ヴァイオレットたちを探そう。あっちがどうなっているかが気になる」


 庭園を抜け、パーティー会場へ行くとヴァイオレットたちが既に到着していた。

 あっちには俺の姿は見えない。


「ヴァイオレット。そっちの俺は?」


「来てないわ。そもそも父の言葉も聞こえなかったみたい」


 俺が呼ばれてあいつが呼ばれない。

 俺とあいつの違いはダンジョンにいたもしくは、コアちゃんの近くにいた。

 ダンジョンに、より関わってる俺の方がダンジョンマスターと認識されたんだろう。


「なんにせよあいつと強制で対面しなくて良かった」


 しばらくヴァイオレットたちと近況を報告し合った。彼女たちは今、妖精族全ての王。すなわち妖精王によって城に招かれているらしい。


 特に俺が妖精王に気に入られていて、旅を再開しようにも妖精王の怒りに触れないように別れないといけないため難儀してるそうだ。


「へっ、ざまみろ。俺にだけ仕事押し付けた罰だ」


 俺が馬鹿にしたように言うと、一人のダンジョンマスターが俺に諫言してきた。


「ユースケ様、あちらのユースケ様もそれなりに苦労しています。悪く言うのは控えて頂けませんか」


 俺に諫言してきたのはソランだった。

 俺の記憶ではソランは俺が何しても褒めるだけだったのに初めて注意された。


「主を貶すのは主であっても許さないか。すまんなソラン、俺が悪かったよ。それとお前の忠義を嬉しく思う」


「はっ、無礼を許して頂いた上にそのようなお言葉を頂き恐縮です」


 そう言ってソランは下がった。

 ヴァイオレットを除けばうちのマスターで一番ランキングが高いのはソランだ。彼の姿を見て他のマスターたちも俺に対する忠義の在り方は何かを学んでいる。


 主が間違ったことをしたら止める。

 それも配下の務めだということをソランは皆に示したんだ。


「しばらく見ないうちにずいぶん大所帯になったのぅ」


 後ろを振り返ると声の主、魔王の爺さんが後ろに二人の男女を連れて立っていた。

 男の方は長髪でメガネをかけている。孔明と似た雰囲気だから多分知略を使うタイプだ。


 対照的に女の方は細身だが服で隠れていない腹は見事に割れていて目は肉食獣のそれだ。

 二人とも獣人族のようで獣耳が生えてる。男は兎耳女は猫耳だ。


「い、いやーしばらくぶりです魔王様。お連れの方はどちら様でしょうか?」


「儂の側近じゃよ。二位と三位じゃ」


 てことはここにダンジョンマスターのトップ3が揃い踏みってわけか。

 やべえ面子だ。


「は、初めまして。スライムダンジョンの雄亮です」


「初めまして。私は二位のレジェンドダンジョンのシュペルク。君の噂はよく聞くよ」


「ジェノサイドダンジョンのダリーシア。ここでは戦えないのが残念だ」


 喋り方から考えるにやはりシュペルクが智でダリーシアが武で間違いない。

 てゆーかめちゃくちゃこの二人威圧してくるんだけど。この二人のレベルになると威圧に物理的な力でもあるのか、俺が持っていたグラスが割れて持ち手だけになっている。


「これこれ。儂のグラスまで割れてしまったわい」


「失礼しました!」


「悪ぃ」


 魔王に諌められてやっと二人は威圧を解いてくれた。怖かったー。

 後ろでヴァイオレット、ジョーカー、ソラン、老師が対抗してくれてなかったら気絶してたかも。


「してユースケよ。そろそろ儂と戦ってみんか?」


「ははは、ご冗談を。まだ我々ではそちらの足元にも及びません」


「まだ、か…………面白い。ならばしばし待つとするかの。二人共行くぞい」


 一瞬鋭い目つきになったが、すぐに元の好々爺然とした態度になって魔王は去っていった。

 マオやマスターソードが居るからって油断できないな。早くLランク級の戦力を揃えなければ。






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