第137話

「ぱぁぱ、まんま」


「はいあーん。もぐもぐしなさい」


「もぐもぐ」


 離乳食が食べられる子たちが増えてきて、食事のたびに大騒ぎだ。

 まだミルクの子たちはちゅぱちゅぱとおしゃぶりをしゃぶりながらこっちを見ている。


 赤ちゃんってこんな時間は何を考えてるのだろうか?

 しかし今どきの離乳食は思ってたよりうまいな。味が薄いのかと思ったが、案外しっかりと味がついてる。


 子供の成長は本当にそれぞれなんだな。

 歩く子も走る子もいる。


「ギャー!」


「あーどしたどした。よしよーし」


 ちゅぱちゅぱとしてたおしゃぶりを落としてギャン泣きし始めたロッソを慰める。

 俺にはコアちゃんやギラン、ヒューマンスライムたちがいるから負担は少ないけど、普通のお母さんは一人なんだよな。子を育てる母は偉大だと思う今日この頃だ。


「ん、もうすぐ会議か。ギラン、あとは頼む」


「おう」


「それじゃー行ってくるよー。パパがいなくても泣かないでねー」


「うー」


「いい子ーするー」


 一人一人ぎゅっと抱きしめて俺は会議室へ転移した。



 ■□■



「人口はどうなっている?」


「戦争があったので移住は少し落ち着きましたじゃ。しかし国から出ていくものはおりませんの」


「教育は?」


「留学生の第一陣が来ましたのでそれぞれ専門技能を持っているヒューマンスライムが講義しています。初等部、中等部はマスターたちが上手く教育していますよ」


「産業は?」


「農工水どれも順調です。ノルマではなく成績上位者のDPアップが効いたようです。ほとんどの労働者が熱心に働いています」


 どの部署も順調らしい。それもそうだ。エスリメは豊かな経済、高水準な教育、強大な軍事力のすべてを持っている。しかもどこからも入国しやすいと来た。


 現在の人口割合は、人族八割、妖精族一割強、獣人族と魔族が少々だ。


 妖精族が多いのは旅に出てる俺が宣伝してるからだろう。

 人族以外は住処をあまり変えたがらないと聞くし、気長に待とう。


「マスター、ダンジョンの踏破状況が大きく更新されました。確認してください」


 コアちゃんに言われてダンジョンのマップを開くと、いくつかの冒険者を示すドットが第一迷路の終盤まで来ていた。


 誰だ⁉…………まじかよ、今エスリメで一番第一迷路を攻略していたSSSランクパーティーに蓮が合流している。

 何でダンジョンに居るんだよ!やりたいこと見つけるとか言ってただろ。


 まさかうちのダンジョンを攻略することをやりたい事にしたのか?

 事情を知ってるやつから聞くと、エスリメで暮らしていた蓮だが、気分転換にダンジョンでの依頼をこなしてたらSSSランクパーティーのやつから誘われたそうだ。

 主人公ルートだな。


「まずいな。まさかここまで早く第一迷路が突破されるとは……後半年はかかると思ってたから第二迷路はまだダンジョンバトル用の凶悪仕様だぞ」


 このままだと冒険者が死にまくってしまう。

 …………しかも蓮が高ランクモンスターを殺しまくってダンジョンの戦力が低下する可能性もあるじゃないか。

 どうにかして仕様変更するまで時間稼ぎをしなければいけないぞ。


「それでは初第一迷路突破記念として彼らを観光区の高級ホテルに招待してパーティーを開いたらどうでしょう。それで一週間くらい時間を稼げるのでは?」


「それが良いな。第二迷路が凶悪だと冒険者のモチベが下がるかもしれないし」


「第一迷路を突破した者のみが使える第二迷路直通テレポートゲートも設置しましょう」


「そうだな」


 国王になってもダンジョンマスターは辞められないから大変だ。






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