第136話
「雄亮さん。おじゃましますよーって…………何を読んでるのですか?」
俺が自宅で本を読んでいると孔明が訪ねてきた。
俺の膝の上にはガエルが座っていて分かりもしないくせに、難しそうな顔で本を眺めている。
「【王とは】。国王の心構えが書かれている」
「おお。ついに王としての自覚ができたのですね」
俺の言葉に感激して孔明は涙を流した。
いや、王としての自覚は元からあったぞ。これは暇つぶしに読んでただけで。
「嬉しいですがそれは読まないでください」
「何で⁉」
「その本の著者は今は滅んでるバニーマ王国最後の王、ギャミクです。彼は民への圧政の結果革命を起こされて処刑されました。そんな王の心構えなんて読んでも意味ないですよ」
へぇー。他国からの交易品に混じってた本をちょろまかしたから著者は知らなかった。
「はあ、それで?何しに来たんだ?」
「平原エリアでエスリメ軍の合同演習があるからその視察に行くって予定だったでしょう」
やべ、完全に忘れてた。今朝までつまらん予定だなーって考えてたのに。
「すまん。すぐ行く」
ササッと礼服に着替えて子どもたちの世話はギランとヒューマンスライムに任せて俺は慌てて飛び出した。
「転移しなさい!ダンジョンマスターでしょ!」
王の心構えなんかより自分のことを完璧にさせないとな。
合同訓練を見に行くと、流石に壮観だった。
現在のエスリメ軍の規模は人間部隊四万五千人、ゴーレム部隊一万体、Aランク以下のモンスター部隊二十万体、Sランクモンスター部隊一万体、SSランクモンスター部隊二千体、SSSランクモンスター部隊五百体、Lランクモンスター部隊(準備中)だ。
「あれ?ドラドラが居ない」
水棲モンスターのリーヴァはともかくどうしてドラドラは居ない?ヤキトリはちゃんと居るぞ。
きょろきょろとドラドラを探していると、遠くの方からグララララーとドラドラの鳴き声が聞こえた。
「やっと来たか…………誰か乗ってる?」
目を凝らすと、赤ちゃんたちの世話を任せたヒューマンスライムのひとりだった。
何かを抱っこしている……まさか。
ドラドラが近くに降り立ち、軽い身のこなしで飛び降りてきたヒューマンスライムが抱っこしているのは……サティだった。
「申し訳ありませんユースケ様!」
「どうした?」
「サティちゃんが僕たちにユースケ様のところに連れてけって命令したんだ」
「サティが?一体どういう……ドラドラが喋った⁉」
「進化して喋れるようになったよぉ」
なんかイメージと違うな。
小学生ボイスでのんびりした喋り方なのに厳ついドラゴンだ。
サティに気を取られていて気づかなかったが、ドラドラの体が一回り大きくなっている。
黒いだけだった鱗の色に艶が出ている。
ブラックドラゴンからシャドウドラゴンに進化したようだ。
高位のモンスターは人語を喋れるやつもいるらしい。
ドラドラもようやくその段階まで来たか。
「進化したことは分かった。それで?二人ともどうしてサティの命令を聞けたんだ?サティはまだ二音しか喋られないんだぞ」
「それがね」
「言葉ではなく頭の中に直接イメージで訴えかけてくるのです。恐らくサティ様はテイマーの素質があります。加えてユースケ様のお子様なので我らも逆らえなかったのでしょう」
サティがテイマーか……てことはサティは俺のダンジョンのモンスターにならどいつにでも命令できるってことか。
「それじゃあ俺が命令しよう。今後サティの命令にはそれぞれの意思で従うか従わないか決めろ」
これでサティがもしもわがままなお嬢になったとしても、あいつ殺せ的な命令とかならモンスターたちが拒否できる。
子供の精神は不安定だからな。いつ変な命令してもおかしくない。
「ぱーぱ、だこ」
「はいはい」
サティがテイマーなのはもうどーでもいいや。
俺に会うために自分の能力を総動員してくれたことがとにかく嬉しい。
娘かわええ!
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