第134話

「まずは勝利報告を国民にしましょう。中継は見ているでしょうが、あなたの口から発表することが国王の役目ですよ」


 俺の勝利報告の放送後、出入国規制を解くとエスリメはお祭り騒ぎになった。

 俺もそれに交わりたいところだが、まだやらないといけない事が山積みだ。


 まずは戦犯のウォルテニア王たちの処刑。

 ここで王たちの処刑後、国民たちも同罪だと殺そうとしてくる魔王的行動をする俺と、それを止める為奇跡の生還を果たした勇者たちとの死闘という茶番をして最終的に俺が勇者たちを認め、ウォルテニアの統治を任せる結末に持っていった。


 ウォルテニアの国民たちは、邪悪なダンジョンマスターから命がけで自分たちを守ってくれた勇者たちの統治を望んで受け入れ、国名を変えてただのウォルテニア国として新たな一歩を踏み出した。


 そしてウォルテニア軍の始末だが、彼らを開放してしまうといくら口止めしても、茶番が嘘だとばれるのは時間の問題なので国に返してやるわけにはいかない。


 扱いに困ったが、結局そのままの命令系統で再編成してエスリメ軍人間部隊として働いてもらうことになった。

 他種族共栄国家の軍隊がモンスターばかりなのは前からどうかとは思ってたんだ。


 家族に会うことができないのは悲しんでいたが、敗軍の待遇としては破格なのでおとなしく従ってくれた。

 今はマスターソードの指導でモンスターとの連携訓練をしている。


 ウォルテニアがエスリメの属国扱いになってるので、ウォルテニアの属国だった国々もエスリメの属国ということになる。


 元の国を管理していた奴らは処刑してしまったので、頑張って生き残っていた元王族や公爵家の人間を探して旧臣を呼び戻し、彼らにゴーレムを預けてマスターたちをエスリメに帰還させるのが一番長くかかった。


 どの国も上手いこと王家の血が生き残ってくれていたお陰でこちらからは兵力だけを提供するだけで良いのは幸いだった。


「あー疲れた」


 戦後の諸々の処理を終えた俺は児童保護施設の隣に建てた俺の家へ帰った。


「ただいまー」


「おかえりなさいマスター」


「だぁい」


「おおサティ、パパにお帰りしてくれるのかい?」


 俺がサティに頬ずりすると小さな手でペチペチと叩いてきた。

 照れ隠しか?可愛いいやつめ!将来が楽しみだ。


 子どもたちは隣の児童保護施設で寝起きしているが、赤ちゃんたちは俺の家にいる。

 そのせいか俺の後継者はこの子たちの中の誰かだという噂も流れている。


 サティを抱っこしてコアちゃんとベビールームに入ると、寝ている子以外が障子が空いた方を見て俺だと分かるとにぱって笑った。


「ああ、かわいーなーもー」


 いつの日か忘れたが、ベビールームから脱走して読書中の俺の隣にいた時とか可愛い過ぎて死ぬかと思った。


 もうそろそろ離乳食の子も居る。この子たちが成長するまでにもっといい国にしなければならないな。


 赤ちゃん成分を存分に堪能して眠かったのを思い出したので、自室に戻って少し仮眠した。

 目を覚ますと、隣でサティが寝ていた。おかしいな、ちゃんとみんな寝かしつけたんだが……。


 コアちゃんは俺の代わりに孔明と仕事してるし、もしかして自力で来たのか?

 まあ、家は和風建築だから赤ちゃんでも戸は開けられないことはない。

 それに自室とベビールームは隣だし。


 ん?それだと他の子が外に脱走した可能性は⁉

 …………いやいや大丈夫。一応門の外には警備のヒューマンスライムが詰めている。


 などと考えているとすやすやと寝ていたサティが目を覚ました。

 そして無邪気に口を大きく開けて笑う。

 可愛え!うちの子可愛え!


「サティちゃん、自分で来ちゃったの?」


「うー?」


「パパと一緒に寝んねしたかったのかなー?」


「んー」


 他にも起きた子がいるのか、ベビールームで物音が鳴って少しすると他の子たちもハイハイしたり、這いずって俺の部屋まで来た。


「もうみんなここまで来れるようになったのか。子供の成長は早いなあ」


 ぐずり始めたサティを抱っこしながら俺はしみじみとつぶやいた。







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