第131話

「ユースケ様!俺たちも戦いますぜ!」


「ウォルテニアなんかに好きなようにはさせないわ」


「そうだー!」


「これは…………」


 冒険者ギルドに行くと多くの冒険者が居て、ぜひ自分たちにもエスリメを守らせて欲しいと嘆願して来たのだ。

 中には報酬も要らないというものもいる。冒険者の言うセリフじゃないぞ。


「…………どうして」


「それだけこいつらがエスリメの事を気に入ったってことじゃねえのか」


「ジェノルム」


 ギルドの奥からジェノルムとリードが出てくると今まで騒いでいた冒険者たちが静まった。

 流石本部マスターとグランドマスター。


「よし、それではユースケ様から返事を頂こう」


「え、えーっと…………気持ちは嬉しいんだけど、今回君たちの手助けは必要ない」


 途端に何故だ!とか言って来たので大声で続きを話す。


「理由はちゃんとある。今回がエスリメにとって最初の戦争となる。つまり今回の戦争はエスリメの力を世界に見せつける最初の機会だ。この国の冒険者は高ランクな者も多い。実際ここにはSSランクの者も居る。君たちと協力してウォルテニアを撃退してしまうとエスリメの力なのか君たちの力なのかが測りづらい。つまりウォルテニアをエスリメ正規兵のみで倒したという結果を得ることでこれから他国がちょっかいかけづらくさせる事が目的なんだ」


 俺の説明に頭が悪い奴以外は納得したように頷いた。

 けどこれだけの冒険者たちがエスリメのために戦おうとしてくれたのは素直に嬉しい。


「もし次にどこかの国が戦を仕掛けてきたらその時こそは肩を並べて戦おうじゃないか。君たちがエスリメを守ろうとしてくれた事に心から感謝する。これはささやかな謝礼だ」


 俺がメニューを操作するとギルドにいた者たちの指輪が光った。そして次々と歓声が上がる。

 彼らの所持DPに10000DPを追加したからだ。


「戦いが始まったら中継を始める。酒でも飲みながら観戦してくれ」


「うおぉぉぉぉ!」


「王様万歳!」


「絶対に勝ってくださいよ!」


 途端に冒険者たちはご機嫌になって店の方へ走り出した。

 もしも次に戦争をふっかけてくる国が居れば、今回の冒険者への報酬を聞いてもっと多くの冒険者が駆けつけてくれるだろう。


 漢文の教科書であったなこんな話。

 主にいい馬を買って来いと大金を与えられた使用人がその金の半分を使って死んだ馬を買っていた。


 当然その主は怒ったが、しばらくすると商人たちがこぞって良い馬を主に売り込んできたのだ。

 あの主は死んだ馬にさえ大金を払うのだ。ましてや良馬ならばと。


 今の話をさっきのことに当てはめるとすると、エスリメの王は国を守ろうと立ち上がっただけで大量の報酬を出したのだ。ましてや参加すればと。


「隗より始めよで出た例え話ですね?」


「それだ!」


 確か遠大な物事に取り組むなら身近な事から始めろって話だったか。


「ユースケ、早いうちにに何とかするって言ってたけど大丈夫なのか?」


「ああ。勇者を寝返らせたからな」


「地球文化でかい?」


「それでも多少揺らいでたけど、人質救出の手助けを約束したら一発だった」


「人質?」


 俺がウォルテニアの勇者に対しての悪行を話すとジェノルムは怒ってリードは呆れ返った。


「悪辣な!悪辣な!」


「凄まじいね」


 リードは転生でよかったとか思ってるな。

 でも転生だと勇者の様な特殊能力は無いからどっちもどっちだと思う。

 縁先輩に拉致された俺が一番恵まれてる。


「それじゃもうすぐ開戦だから戻る」


「おいおい、気楽だな」


「今回は司令室で命令するだけの簡単なお仕事だからな。それじゃ」


「おう」


「頑張ってー」







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