第130話
「雄亮さん、ウォルテニアの使者が手紙を持ってきました」
俺は孔明から手紙を受け取り、無駄に豪華な印を外して開いた。
書かれていることは邪悪なダンジョンを神の力で打ち滅ぼすとかなんとか。要は宣戦布告だ。
「緊急放送だ。エスリメの全てに放送するぞ。急いで準備しろ」
俺は服装を整えて机に書いてもらった原稿をおいた。
すぐにカメラの用意がされて放送が始まる。
『ごきげんようエスリメの民たちよ、本日は君たちに報告がある。先程神聖国ウォルテニアより宣戦布告をされた。だが安心して欲しい。既に敵は俺と宰相の孔明の策の中にいるのだ!できるだけ早く何とかするから、諸君にはいつも通り変わらず生活して欲しく思う。心配するなエスリメは負けやしない、建国宣言での決意を見せてやろう。君たち国民に傷一つつけさせやしない。以上だ』
緊急放送後かなりの混乱が予測されるが、今日中、半日くらいで、ウォルテニアに勝てばいいのだ。
「中々堂々としてるじゃないですか。慣れましたか?」
「慣れるわけ無いだろう今も心臓バクバクだ」
俺は孔明と一緒にモニターがたくさんある司令室に行った。
「孔明、ウォルテニアはいつ来る?」
「ざっと2、30分って所でしょうか」
「きっちりと前準備してやがるな。こちらの配置は?」
「完成してます」
よし、例えこちらが勇者を味方につけていたとしてもウォルテニアは元々軍事国家だ。
兵士の質はかなり高いと評判だからな。エスリメの総力を挙げて叩かせてもらおう。
「しっかしあの勇者三人、あっさりと寝返ったなぁ」
「ウォルテニアは昔から勇者の扱いは酷いですからね。最近は転移魔法を真似できるようになって更に悲惨になってますから」
いくら勇者たちがウォルテニアを憎んでも、彼らが裏切れない理由がある。
まず国内の中で良く言えば心優しい、悪く言えばお人好しの国民の近くに勇者を召喚。
そのような性格の人間は勇者を世話して、勇者は自然とその人間を信頼する。
そして一年ほど経った頃に勇者と信頼を築いた者を監禁、人質にして勇者が逆らえないようにする。
ちなみにこの糞みたいなシステムを知ってるのはウォルテニアの上層部だけだ。
これで大体の勇者はウォルテニアに渋々従うが、たまに孔明と均の様に人質を助けて逃げ出したり人質を見捨てる勇者がいる。
そういう奴らが世界で活躍するので辛うじて勇者の名声は地に落ちてないのだ。
「孔明の場合は均の未来予知のおかげか?」
「はい。転移は勇者の標準能力ですから当然ウォルテニアも対策をして人質の場所が分からない上に番兵を付けてきましたから均が居なければ私はウォルテニアに骨を埋めていたでしょう」
孔明は均の未来予知で人質を見つけて、番兵が交代の隙を狙って転移してウォルテニアから逃げた。
その後各地をさすらって最終的に龍人の里にたどり着き、孔明と均は龍の試練というものをクリアして今に至る。
「雄亮さん、リードさんから連絡です。冒険者が何やら騒いでいるようですよ」
戦争なので一時的に出入国を禁止してるからな。
依頼を受けてる冒険者にとってはたまったんじゃないだろう。
「依頼失敗の保障でも賠償何でもしてやるから黙らせろと言ってくれ」
「いえ、あなたが思ってるような事ではないようですよ。とりあえず行ってみましょう」
ニコニコと笑いながら意味深なことを言う孔明を追いかけながら俺は冒険者ギルドに向かった。
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