第128話
Side留守番雄亮
「だぁーくそっ!あいつぽんぽんぽんぽん書状書きやがって!俺を過労死させる気か⁉」
まず来たのは数人のウンディーネ。望むところに家を建てると書かれていたので、漁業区画が気に入ったようなので水中に家を建てた。
次に来たのはドワーフの職人の団体で、二人のリーダーの内の一人がエスリメでの出店の許可を求めてきた。
彼の右手にはしっかりと書状が握られていた。
それとジェイの彼女も来たな。
式は旅が終わったらするようなのでその時は盛大にやってやろうと思う。
問題はエルフたちだ。何か彼らの居住する森を作るって約束してたらしい。超重労働。
一本一本植えていったら木の種類まで注文してきやがった。
え?ピクリナの親父さん?分かりましたやりますよ!
娘さんにはいつもお世話になってるので。
部下の親とか面倒だ!
森を作ってエルフたちが満足して家を建て始めた翌日、俺はあることを思い出してリードに会いに冒険者ギルドまで行った。
リードはグランドマスター室でゴロゴロと漫画を読んでいた。羨ましい。
「良いご身分だな」
「うん?私はまだ休暇中だよ。なのに
知ってるぞ。一ヶ月も二ヶ月も長期休暇は認められないと、職員たちに引っ張られてきたんだろう。
「そうか。そういう事にしとくが、今回は2つ用があって来た。まずはこれだ」
俺はアイテムボックスの付与された袋をリードに渡した。
「これは何が入ってるのかな?………………遺品か」
中に入っているのはうちのダンジョンで死んだ冒険者のギルドカードと装備品と持ち物だ。
悪人のやつは別でジェノルムに渡してあるからこれらは普通にモンスターや罠にやられた奴の遺品である。
「死体を返してやることはできないがこれで我慢してくれ」
ヒューマンスライムにするために使っちゃったから死体は返せない。
「いや、本来ならこれらも見つからないのだよ。十分すぎるね」
「殺すの禁止って言われるかと思った」
「そこまで図々しいことは言わないよ。ただでさえ危険度が低いダンジョンなんだ。むしろ死んだほうが悪い」
冷たい言い方だな。だけど冒険者は冒険しないって言うし、慎重であることが何より重要だろう。
うちのダンジョンごときで死ぬってことはこれから冒険者として生きていけないということだから。
「だけど、全部こちらに返していいのかい?結構性能のいい物もあるけど」
「いや、俺の兵はアダマンタイト装備が標準だから」
「恐ろしい国だね。仕官は来ているのかい?」
うーん、文官志望も武官志望も全部孔明に任せているからなぁ。
そういえば前に学がなってないから全員学校送りだ!って怒ってたような。
「まあぼちぼちと。現状人よりヒューマンスライムの方が使えるからなあ」
専門書を食わせたら2、3日で完璧にこなせるようになるし、スライムだからアダマンタイトスライム装備との相性も良い。
効率だけを重視すらなら仕官希望者を強制的に全員捕食させてヒューマンスライムにさせるのが良いだろうけど、流石に人の道から外れすぎてる。
自分から食われたマスターソードが例外なのだ。
「もう一つはダンジョンに休憩エリアを作ろうと思うんだ。所々に魔力回復機を置くからその周囲を。どうかな?」
「ダンジョンマスターがダンジョンの難易度を下げるだなんて……まあこちらは助かるが。冒険者に気を使わないといけないなんて国王兼任は大変だなあ」
「俺も早く王様なんて辞めたいよ……どっかに後継者でもいないかなぁ。最悪簒奪者でも良い。喜んで玉座を譲ろう」
「おいおい」
ブツブツとぐちを言っていると、俺のスマホが鳴った。
この着信音は老師だ。
「老師、どうした?」
『勇者が入国して来ましたのじゃ。それも三人』
人類最強戦力が来ちまった。
リードに断りを入れて俺はすぐに老師と合流。
話を聞くと、身分を隠して来たそうで入国審査で止めて暴れられても困るからヒューマンスライムの尾行を付けて入国させたらしい。
「暴れに来た訳じゃなかったから通しましたが、大丈夫かのう?」
「老師の判断は正しいよ。恐らく転移の座標設定の為に来たんだろう。座標設定自体は誰でもいいけど、神聖国では勇者を研究して勇者無しで転移魔法を使えるようになったらしいからな。だからこんな捨てごまみたいな使われ方されるんだ」
「敵ながら哀れですのう」
全く、勇者を捨てごまだなんてどんな神経してるんだ?
それに軍隊を街のど真ん中に転移させるつもりだったのかよ!碌でもない国だな。
「どういたしますかの?」
「心配するな。孔明がプランを作ってある。俺は動くからマスターソードに伝えてくれないか?戦争の準備をしろってな」
俺は勇者を尾行しているヒューマンスライムと連絡を取り、合流するために走り出した。
============================
もしも少しでも面白いと思ったら、フォローやレビュー、応援をしていただけると、非常に励みになります。よろしくお願いします!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます