第127話
「良かったじゃねーか!ちゃんと道化ができたんだから」
俺のフォローが止めになったのかジョーカーは落ち込んで自室に閉じこもってしまった。
「あれ?」
「ユースケ様、ジョーカー様は本気で取り組んだことに関して馬鹿にされると3日は閉じこもるくらいメンタルにやられるんです」
面倒なピエロだな!
…………3日で出てくるんなら放置しても良かろう。
そして、ソフィアたちの家族紹介が始まるが……分からん!
ひ孫の嫁の甥の息子って家系図でどの辺りだ?8親等か?
ともかく長い紹介が終わり、やっと村に案内された。
「へぇー、何か良いなぁ」
エルフの村の建物は木の上にある。ツリーハウスってやつだな。
木から木へ橋が渡されてあって地上に降りる必要が無いように見える。
ずっとここに住めと言われたら悩むところだが、数日の旅行ならばこんな所にいるのもありだ。
「エルフは森に生きる種族ですから。できるだけ木のそばに居たいのですよ」
俺の隣で話し始めたのは若い見た目のエルフの男だった。
「えっと、あなたは?」
「おっと失礼。私はピクリナの父のミューラーと申します。この村の長です」
「村長?若いのに」
「はっはっは。エルフは寿命が来る五年前から急に老化が始まるのです。それまでは人族で言う20代の姿のままなのですよ」
「ちなみにミューラーさんはおいくつで?」
「400までは数えてましたが……500、いや600…………まあその辺です」
長命種ってすごい。そんな感想しか持てなかった。
「ピクリナから聞きました。移住の件について。ここではなんですから家で話しましょう」
ミューラーさんに付いていき、村で一番大きなツリーハウスの中に入った。
「どうぞ」
「これは?」
「エルフ秘伝の飲み物と菓子です」
出されたものはどう見てもコーラとポテチだった。
「あのー」
「ははは。流石に気づかれましたかな?いやー、あなたの国、エスリメは素晴らしい!少々緑が足りませんがこれが我らの答えです」
「と言うことは」
俺は予め作っておいた孔明への書状と翻訳魔法が付与されたメガネをミューラーさんに渡した。
「…………よろしい。我々はエスリメに移住しましょう」
ミューラーさんはニッコリと笑って言った。
エルフの村に滞在して二週間ほどして俺たちは次の目的地へと出発した。
「近くにあるギルドは……サラマンダーの町ガレーか」
「サラマンダーの町は温泉で有名ですからね。楽しみです!」
俺が御者台で近くのスライムから情報を得ていると、ソフィアが馬車の横窓から顔を出して目をキラキラさせながら言ってきた。
これは一週間滞在コースだな。
まあ、急ぐ旅でもないから良いだろう。
「危ないから顔出すなよ」
「はーい」
馬車は自動だし周りにモンスターは居ない。へーわだなー。
馬車に揺られ温かい風を受けているうちに俺は眠くなってきた。
「ユースケ様、代わりましょう」
「ふああ、頼む」
ソランと交代して俺は自室に戻ってベッドに沈み込んだ。
□■□
「宣戦布告ぅ?」
ギルドの情報掲示板を見ると、神聖国ウォルテニアがエスリメに宣戦布告し、その日の内にダンジョンに侵攻してきたと書かれてあった。
きな臭いですとは聞いていたけれどどうしてこんな愚かな……。
「勇者とやらに余程自信があるようね。もしかして本気で勝機でもあると考えているのかしら?」
「妖精の剣のようなチート武器でもあるのか、或いはエスリメが国という形を取ったことで各国と協力して攻め込んで来るのではないかと危険視して先制攻撃でエスリメを潰すつもりなのか」
多分後者だと思う。エスリメは新興国家であまり力がないとでも思われたのではないのだろうか。
孔明が以前こういった事が起こりうると言っていた。
脱走した元勇者の孔明と均は神聖国にかなり詳しいからその対応策も既に作ってあるから大丈夫だろう。
「でも勇者って孔明さんと同格ですよね?ちょっと心配です」
「孔明曰く、あいつと均は勇者の中でも当たりの能力を持ってるから同格ってことはないだろう。今、神聖国に召喚されている勇者は三人だ。大丈夫、孔明ならなんとかするさ。本当にヤバくなったら連絡くれるだろう」
「標準で付いてる転移だけでも厄介では?」
「…………何とかなるだろう」
何とかみんなの前ではすまして言ってあるが正直不安だ。何事にもイレギュラーは存在する。
勇者たちが孔明が想定する以上に強かったら終わりだ。
俺はエスリメの勝利を祈る事しかできない。
もう一人の俺と仲間たちを信じよう。
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