第126話

「ま、それはお前と俺に任せる。簡単にはこのダンジョンは落ちない。できるだろ?」


「それが私の仕事ですから。それではもう時間なので失礼します」


 孔明の言う通り演説台のある広場には地面が見えないくらい人が溢れかえっていた。

 しばらくすると俺とダンジョンマスターたちが出てきた。


 ヴァイオレットたちも居るな。ヒューマンスライムたちで代理をしてるのか。

 そして肝心の宣言は…………なんか地球で聞いたことあるのを色々ごちゃまぜしてグレード下げたような感じだな。


 けど、噛まずに堂々と言えてるところは良かったと言えるはずだ。

 だって高校生のクソガキだぜ。それだけで十分すごいだろ。


「よし、じゃあ帰るか…………お前ら何で泣いてるんだ?」


 振り向くと全員が号泣していた。

 ジョーカーですら仮面を涙で濡らしている。


「え?本当にどうした?」


「ユ、ユースケ様の立派な姿を拝見できて感動しているのです」


 ソランの言葉にうんうんと頷く一同。

 親かこいつら!


「私の夢を自分の夢でもあると言ってくださって感極まりました」


 どうしよう。ここって主君ぽいこと言う場面なのか?


『そういうことならば主殿、我輩に続いて言ってください』


 俺は妖精の剣の言う通りに言った。


「おまえたち、泣くのはまだ早いのではないか?国は興った。だがこれはまだ始まりに過ぎない。俺たちの歩みはまだ始まったばかりなのだ。ならばお前たちのすべきことはなんだ!」


「ユースケ様に従い御身を守ることです」


「違うなソラン」


「え」


「俺とお前たちは主従である前に同志だ。俺の歩みが止まりそうになったら隣で声をかけ、後ろから背を押し、前で俺を引っ張ることがお前たちのすべきことだ。これからも俺を支えてるれるな?」


 一度涙を止めていたソランたちは再び涙を流した。

 そしてそのまま俺に跪き胸に片手を当て敬礼をした。


「我等一同、ユースケ様と共に歩ませていただきます」


「ああ、頼んだぞ」


『主殿、どうですかな?』


 なかなか良かったよ、初めてお前のことを尊敬する。ただのお喋り剣じゃなかったんだな。


『その評価はあまりにも酷すぎますぞ!』




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 建国式を見終わった俺たちは旅を再開した。

 今のところ妖精族の中で勧誘したのはウンディーネとドワーフ。

 次に行く場所は。


「やっとエルフの村か。ピクリナたちの家族がいる村だな?」


「うん。みんな家族」


 村丸ごと移住してくんないかな。

 見た目華やかなエルフが住んでくれたらエスリメももっと賑わうのに。


「全員エスリメに移住してくれないかなあ」


「流石に森がないと駄目じゃないですか?」


 んー、そんなもん農業区画にちょちょっと植えればいいだろう。

 あっちの俺は地味作業好きそうだし。

 うん、声かけるだけかけてみるか。


 俺はそんなことを考えてるので気づかなかったが、この時ジョーカーとシースナは深刻そうな顔をしていた。

 あ、ジョーカーは仮面だろうってツッコミは無しな。


 村に着いた俺たちと、迎えに出てくれたエルフたちが見たものはジョーカーとシースナの土下座だった。

 以前俺とのダンジョンバトルで彼らを人質にとったことの謝罪だ。


 ジョーカーとジョーカーの同盟に入ってたシースナは馬車でこれをすると決めていたらしい。


「いえ、気にしてませんよ。あの程度のモンスターなら普通に倒せますし」


「え?」


「お兄ちゃん!どういう事⁉」


 フィーの兄曰く、ジョーカーの見掛け倒しモンスターのことを見て、あまり強くないことを見抜き、暴れる様子もないので放置していたらしい。


 それをジョーカーは上手く行ったと勘違いして、ソフィアたちも家族が抵抗してないので本当に人質に取られていると思ってしまったようだ。


 そういえば、助けに行かせたヒューマンスライムが全く感謝されてなかったな。

 うん、これは事故だな。







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