第125話

 ジェイは俺たちが昼食を取ってるところで帰ってきた。

 ずいぶん遅いお帰りだなあ。


「ようジェイ。イティさんとは上手いこといったか?」


「やっぱりそれが目的だったんですね…………そのう、ありがとうございました」


 ジェイが苦笑いしながら礼を言ったことでうまくいったことが分かり、みんなが祝福の言葉をかけた。


「旅が終わったら盛大に式を挙げようじゃないか!何なら国全体でやってやろうか?」


「や、やめてくださいよ。フラグが建つじゃないですか」


 ……結婚が決まった時点でフラグはバチバチ建ってるんじゃないのか?

 しかしジェイの言うフラグ云々にも一理ある。よし、ジェイには危険なことはさせないようにしよう。


「そうだ。結婚祝いだ。これを持ってな」


 俺が取り出したのは一見なんの変哲もない藁人形。

 しかしこれはとてつもない性能の藁人形だ。


「これは?」


「縁先輩特製身代わり人形だ。一度だけなら死んでもそいつが肩代わりしてくれる。フラグを建てさせた身としては心配だからな」


「あ、ありがとうございます!」


「ジェイ、どうせなら俺たちと合同で式を挙げないか?」


「いいわねそれ!流石アキト、冴えてるわ」


「余興はこのジョーカーがやりましょう」


 何かガンガンフラグ建築していくなあ。

 ここまでくると本当に不安になってくる。


「どうしたのヴァイオレットちゃん?」


「あれ?ネックレス…………あたしだけが特別ってことじゃ……え?」


「ソフィア、フィー、ヴァイオレットちゃんが壊れた」


 なんか隅でヴァイオレットとエルフたちが騒いでいるがこちらの声にかき消されて何を言ってるのかわからなかった。ついでだし、皆にも藁人形渡しとくか。


 なんにせよ、ジェイが数百年ぶりの恋を叶えてよかった。

 みんなも楽しそうに笑ってる。ジョーカーでさえ声で楽しそうなことが分かった。

 俺はそれだけで満足だ。




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 エスリメへのテレポートゲートには入国審査場が作られていた。

 審査場とは言ってもよほどの悪人じゃない限りは入れるみたいだ。

 俺たちはメニューを操作してこっそりと入国審査をパスする。


「よし、入国完了。建国宣言は……ここでやるのか。なら」


 俺は演説する俺のことが見やすい近くのビルの屋上のカフェに皆と向かった。

 その道中、エスリメに来た人々がエスリメの物を珍しそうに眺めている姿を度々見かけた。


「ユースケ様、ユースケ様には会いに行かないんですか?」


「どーせ会ってもハッピーなことにはならないさ。あいつと次に会うのは旅を終えて合体する時だ」


 カフェに着き見回すと、一人だけ男が座ってコーヒーを飲んでいた。そいつは見覚えのある男だ。


「孔明?」


「ああ、やはり来ましたね。雄亮さんならここで見るのではないかと思ってましたよ」


 どうやらうちの頭脳様は俺の行動なんてお見通しだったみたいだ。

 てか今のセリフかっこいいな!やはりって自信持って言えるのは憧れる。


「久しぶりだな。区画も増えてここも大きくなった。お前の指示か?」


「ええ、こちらの雄亮さんに沢山働いてもらいましたから」


 ちょっと街の風景を見ると至る所に草木が生やされていて美観にも気を使ってるのがよく分かる。


 あれ一本一本メニューで買わないといけないんだよなー。それほど大きくない二層で結構疲れたのにこんなにやるなんて……旅に行って良かったー。


「建国宣言まで後どのくらいだ?」


「後、一時間ですね。今頃緊張でガタガタになってるんじゃないでしょうか?」


 孔明が言うんだからきっとそうなんだろうな。

 自分のことだが他人事なので俺は気にせずココアを飲む。


「各国の動きはどうなってる?」


「周辺国は友好的、その他の国はまだ様子見って所ですね。ただ、ウォルテニアの動きがきな臭いです」


 ウォルテニア…………ああ神聖国か。あそこには勇者がいるからなあ。

 もしも妖精の剣のような武器を持ってたら苦戦しそうだ。







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