第121話
「ユースケ様、僕を連れて何をするんですか?」
ジェイが俺を見上げて聞いてくる。
「お前、ここ出身だろ?」
「何百年も前ですけど……」
「名のある鍛冶士を知らないか?」
「名のある鍛冶士ですか……うーん、あの時期で今生きてるのは…………バッドル爺は駄目だろうなあ。アースラとシゼール坊なら……二人ほど心当たりがあります」
「何何?面白そうだからあたしも付いていくわ」
俺はヴァイオレットと一緒にジェイに付いていった。
ドワーフの街は大通りは整っているが、一旦路地に入ると俺のダンジョン並みの迷路になっていて地元のドワーフじゃないと迷ってしまうな。
この街は洞窟を掘って街にしているらしい。
新たに掘る時に作った道が重なり合った結果、このようなごちゃごちゃしたような作りになってるらしい。ドワーフに計画性って無いのか?
ジェイも知らない道が増えてて迷ってる。
「…………あ、イティ、久しぶり」
「ジェイ⁉あなたがどうしてここにいるの!」
どうやら昔の知り合いを見つけたらしい。
人間だと三十代くらいの女性だ。ジェイが十歳くらいの見た目でその頃にダンジョンマスターになったのだから友人だろうか?
「ユースケ様、彼女はイティ。僕の幼馴染です」
イティの反応を見る限り、彼女はジェイがダンジョンマスターであることを知ってるらしい。
相当驚いてたからな。
「イティ、この人はユースケ様。僕の主だよ」
ジェイはイティに俺の紹介をしたが、先程の商人たちみたいに俺を褒め称えるだけなので恥ずかしかった。
イティも呆れた顔をしている。
旅の目的を話したところでジェイはやっと話し終えた。
「スライムダンジョンねぇ。そういえば冒険者ギルドでダンジョンマスターが国を作ったって張り紙があったわね。数日後には建国式をするとも書いてあったわ」
建国式か。その日くらいは戻って見物してみるか。
遠くならそこまで
「それでイティに聞きたいことがあるんだけど。アースラとシゼール坊って今どこにいる?」
「アースラとシゼールね。二人だったらドワーフの一二を争う超一流の鍛冶士になってるわよ」
「へぇ、あの二人が」
感慨深そうにジェイは呟いた。
その二人とは仲が良かったのだろうか。
「ジェイ、そのアースラとシゼールってのとはどんな関係なんだ?」
「同門なんですよ。アースラは同期でシゼールは後輩です」
同門ってことはこいつ鍛冶士志望だったんだよな。
でも戦闘は他のマスターたちと負けず劣らずだった。
マスターになってから頑張ったということはないだろう。
コアが弱い奴をマスターに選ぶはずが無いからジェイは元々強かったってことだよな。
「僕は素材から自分で集めるのがこだわりだったので頑張りました」
最初は手頃な素材から始めていって、ドンドンレベルを上げていくうちにSランク冒険者顔負けの強さを手に入れたらしい。
こういう趣味を極めてたらいつの間にか強くなってるのが長命種の怖いところなんだよ。
ある休みの日、イティと散歩(デートだろ!)している時コアに声をかけられて、DPでの素材購入に魅力を感じて快諾、そして今に至るらしい。
まともなやつかと思ってたけど、趣味に関してはかなりストイックな男だった。
イティからアースラとシゼールの住処について教えてもらった俺たちは案内してくれると言う彼女に付いていった。
「イティ……」
ジェイはイティの後ろ姿を見ながらそっとこぼした。
「うじうじするくらいなら告れよ。建国したからお前はもう堂々とできる立場だぞ」
「そうよ。それに彼女はまだストレートヘアーよ。案外あなたのことが忘れられないんじゃないの?」
ドワーフの女性は結婚すると髪を結ぶ習慣がある。
俺とヴァイオレットから次々と言われ頭を抱えるジェイ。
俺自身自分の恋愛になると引っ込むが、人の恋愛に茶々入れるのは好きだ。
もちろん良い方向にな。
「……考えておきます」
顔を赤くするジェイを見て俺とヴァイオレットは肩を竦めた。
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