第108話

「建国宣言?」


「はい。すべての区画も一通り出来上がりましたし、周辺国を招いて正式に国となることを宣言するのです」


 ギランに赤ちゃんたちを任せられるようになった俺は均と協力して遂に全ての区画を完成させたのだ。

 あとは住民たちからテレポートゲートの設置要請を聞いて国内に随時設置していくだけだ。


「式は大々的に行いましょう。各国王族、貴族、ギルドのグランドマスター、商人、冒険者をたくさん招待します」


「……………………そうか!知名度を上げるんだな」


 ギルドは独自の情報網があるし、商人、冒険者は世界中を旅する職業だ。

 絶好の広告塔になってくれるだろう。


「その通りです。ジェノルムさんにこのことを伝えてきてください」


「分かった。孔明は各国の大使に言ってくれ」


「分かりました」


「だぁー」


「どうしたどうした?ああオムツね」


「世話係見つけたんじゃないですか?」


「一人で十何人も見れるわけ無いでしょ!少しは考えろ!」 


「あ、はい。すみませんでした」


 今までも俺一人で世話をしてきた訳じゃない。均とコアちゃんが手伝ってくれていたから一人で六、七人くらい世話していた計算になる。


 ギランが来たおかげで一人につき四、五人をあやせばいいことになったから大助かりだ。

 普段からコアちゃんと一緒に赤ちゃんを十人以上連れていたせいで大使の人たちに俺の実子かと思われたこともあったからな。


「バァーパ」


「あ!ねぇ孔明聞いた!キノンがパーパだって!なぁ今パーパって言ったぞ!この子は天才だ!」


 孔明は降参と両手を上げながら言った。


「孔明おじさん子供好きじゃないんだってー。早くジェノルムのところに行こうなー」


「ういー!」


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「ほう。ついに建国か!俺も式に行っていいか?」


 そういえばジェノルムにはエスリメを見せたことはなかったな。

 盛大に建国宣言をして驚かせてやろう。


「もちろん。そのことでいくつか頼みがあるんだ」


「何だ?…………そういう事なら俺も知り合いのギルドマスターや冒険者に声をかけておこう」


 ジェノルムには彼を慕っている高ランク冒険者が多いからな。

 高ランク冒険者がエスリメを気に入ってくれてホームタウンにしてくれれば万々歳だ。


「エスリメにも冒険者ギルドを作りたいんだけどどうしたらいい?」


「場所さえあればギルドマスターと職員を派遣するだけでいい。もう人選は済ませている」


「へえー、ギルドマスターって誰?」


「俺」


「え?いいのか?ここはどうするんだ」


 ジェノルムはこの街のギルドマスターとして長く勤めている。

 それが居なくなったら大変じゃないのか?


「後任はすでに選出している。信頼できるやつだからすぐにでも行けるぞ」


 仕事が早いな。それだけ冒険者ギルドもエスリメを重要視しているということか。

 まあ、わけ分からんやつが来るより気心しれてるジェノルムが来てくれる方が楽でいいか。


「そういうことだからよろしく。いい場所用意してくれよ」


「ああ!一等地用意してやるよ」


「だー!」


「ところでその子たちは誰の子だ?」


 俺はジェノルムに説明した。

 いい加減疲れたなこの作業。


「はっはっは、ダンジョンマスターが人間の赤ん坊を育てるか。まいいんじゃないか。だけどなんでここまで連れてきてるんだ?」


「人手が足りないのもあるけど、赤ちゃんのうちからいろんな所に連れて行って好奇心の強い子に育ってほしいんだ。好奇心の無い人間はつまらないからな」


「前に渡された資料で読んだが、お前の国は何もかも高水準だが、特に教育はずば抜けている。お前の国民は幸せだな」


「移民募集してるから広めてくれよ」


「それは自分でやれ」







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