第107話

「着きましたよ旦那。妖精大陸です」


 朝起きると、いつの間にか妖精大陸に着いていて、甲板に出ると宝を手に入れて以来ご機嫌な船長に話しかけられた。


「ああ。それにしても妖精族の大陸なのに人族が多いな」


「ここは貿易の港ですからね。ここを出たらすぐに人族の数は少なくなりますよ」


 そういうことか。よく見れば港に居る妖精族は商人風の出で立ちをしているものが多い。


「それじゃここでお別れだな。船長には何かと世話になった」


「いえいえ、あなた方を乗せたおかげで得があったのはこちらです。何か縁があればまた会いましょう」


 俺は船長とガシッと握手して船を降りた。

 さて、この後だが、ギルドに海賊たちを引き渡さないといけない。

 海賊たちはその後、この大陸の警察組織に引き渡されるのだ。


「私も行く」


 皆観光気分で港の各所に散っていったが、ピクリナは近くで暇そうにしてたので一緒にギルドに行くと、受付のお姉さんから衝撃の事実を突きつけられた。


「指名手配、されてない……?」


「はい。妖精大陸の海域で活動してない上に妖精大陸の船も襲ってなかったようです」


 族の賞金は指名手配されている国のギルドでないと受け取れない。

 あんなに宝貯めといてなんで襲ってないんだよ!


「あ、でもランクアップはできます。ユースケさんはSランクに、エルフ以外のパーティーの方はBランクに昇格です」


 この世界の海賊は強いし、規模も規模だったからランクの上がりが凄まじいな。

 流石にSSランクのエターナルブレイブの皆様は上がらなかったようだが。


「それでは海賊たちの身柄は?」


「それについては2つ選択肢あります。1つは犯罪奴隷としてギルドが購入する。もう1つはユースケさんの奴隷にする、です。ただ、誰も指名手配されてないので一人十ロメとなります」


 ロメは妖精大陸の通貨だ。

 一ロメ百円。人間一人千円か……安いな。


「……安い」


 正直言うとアイツらから巻き上げた金があるから金には困ってない。それにせっかくの人手だ。売るのはもったいない気がする。

 仕方ない。街に送ろう。

 どうせ俺の分身がどうにかするだろう。


「では後者で。ありがとうございました」


「お気をつけて」


 港に戻り、残りの海賊船をアイテムボックスに入れて、ヴァイオレット配下のデスパラディンのバチョウとチョウウンに海賊たちを近くのダンジョンまで連行してもらった。


「さーて、こっからが旅の本番だ。張り切っていくぞー!」


「おー!」


 まず最初の目的地はエルフ三人娘の故郷の村だ。




 Side留守番雄亮 


 子供たちが来てからしばらくすると、今度は厳つい男たちが大勢やってきた。

 一体もう一人の俺は何やってるんだ⁉


「えっと……バチョウだっけ?この強そうなお兄さん方は何?」


「はい。海賊たちなのですが、指名手配されていなかったので労働力として使えとのことです」


 あの野郎今のエスリメの住民どうなってると思ってんだ!

 子供と海賊が殆どになっちまったぞ!男女比おかしいことになるだろ!


「うー」


「あーはいはいユーミちゃんミルクでちゅよー」


「んっんっ」


 最近名前付けてないことに気づいて、慌てて名前を付けた赤ちゃんたちの世話で俺は忙しい。

 その上コイツラの面倒も見ろ?ふざけるな…………おや?


「ねえ君、ちょっと手伝って」


「なっ!お前どうしてここに!」


「つべこべ言わない!」


 俺はミルクを飲ませていたユーミを2メートルはあるだろう大男に預けて哺乳瓶を渡した。


「あ、おっとっと……あーよしよし」


 鑑定で見たところこの男、子供好きだ。

 海賊をしていた理由も貧しい子供たちを保護して育てる為だったようだ。

 所謂義賊ってやつだな。


「他の海賊たちには街の説明をして部屋を与えろ。ギランは俺と来い」


 ヒューマンスライムに任せて俺は大男改めギランを連れて児童保護施設に戻った。


「おい、何であんたがここにいるんだ?」


「ん?ああ、外の俺のことか」


「外の?もしかして分身でもできるのか」


 察しが早くて助かる。俺は頷いた。

 鑑定を使ってないらしいのに外の俺はよくこんな人材捕まえたな。

 今俺が最も欲しているナンバーワンだ。


 才能があるのだろう、こんな厳つい見た目なのに赤ちゃんたちは全く怖がってない。

 ユーミに至っては俺の時よりご機嫌だ。

 悔しい。


「それじゃあこれからよろしく」


「お、おう……」

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