第106話
散々汚い言葉を吐いて息も絶え絶えな頭は疲れたのか、しぶしぶ案内を始めた。
海賊の船は海賊の中で比較的戦闘力の低い海賊たちを使って動かした。
戦闘力が低いと言っても、もちろん見張り付き。
ただ、それだとあまりにも船が多すぎて見張り手が足りないので、それぞれの船に定員ギリギリまで乗せると半分まで減らせた。
余った船はアイテムボックスに仕舞う。
「あれだ」
見えてきた島は緑にあふれていて、とても海賊の巣窟には見えない。
俺は岩場の穴の中で宴会する海賊たちを想像してたから、少し期待はずれだ。
だが、それもそうだな。漫画みたいにtheアジトな島を使ってたらすぐに見つかって軍隊が送り込まれるだろう。
「ソラン、島にいる海賊たちを無力化してこい。もちろん」
「生け捕りですね。かしこまりました」
俺に一礼してソランは飛んでいった。
逆光を浴びる漆黒の翼がカッコイイ。
「この大空に、翼を広げ」
「どうしたの?」
「いいや、なんでも」
島の裏側に行くと突然、島の一部がぼやけて大きな船着き場が現れた。
「偽装の魔道具ね。きっとソランが解除したんだわ…………この範囲を偽装できるなんて相当良いものね」
船着き場に船をつけ、海賊を一箇所に集め見張りを残して降りると程なくしてソランがやってきた。
戦闘はしたはずなのに服にホコリ一つ付いてない。さすがだ。
「よくやった」
「ありがとうございます。留守番していた海賊自体は十数人しかいませんでしたので簡単に制圧できました。これは中の構造の地図を書いたものです」
「ふーん…………ソラン、お前ダンジョンマスターになる前は製図家でもしてた?」
「いいえ」
地図は精巧に作られていてどこに何があるのか簡単に分かった。
この道は凸凹に注意って……よくこの短時間で書けたな。
ソランに案内されて最初に行ったのは宝物庫だった。
金銀財宝はもちろん、貴重な魔道具もごろごろある。
「船長、こういうのって海賊を捕まえたやつのものだよな?」
「はい、この領海の国の法律ではそうなってます」
「分前は一割でどうだ?」
流石に少なすぎるだろうけど、とりあえず低めに言って少しずつ上げていこう。
「そんなに頂けるんですか!?」
え?これでいいのか。
船長は満面の笑みを浮かべてるからこれでいいんだろうな。
「あ、魔道具は全部もらうから」
「もちろんです!」
俺の分の宝をアイテムボックスに入れると、ごっそり減ったがそれでも宝は山になっていた。
船長たちは台車を使いながら宝を運び出し始めた。
あの分じゃ、何往復もするな。今のうちにソランに他のところも案内してもらおう。
「ん?」
どうも変な感じがしたので、アジトを出て島の草原に行くと俺のスライムたちがいた。
「てことはこの島にもダンジョンがあるのか」
このことがどこかの国にバレてたら財宝を先取りされてたな。
いやー、襲われてよかった。
「ユースケ様」
「ああ、悪い悪い」
次に行ったところは牢屋だった。
そこに入ってたのは大勢の子供。赤ちゃんもいる。
「おい、このガキ共はどうしたんだ?」
「さらっちゃあいねえさ。貧乏な親からガキを買って育てて立派な海賊にするつもりだったんだよ」
奴隷ってことか。
「てことはコイツラには帰る場所はないってことか」
「そうだ」
じゃあダンジョンに送ろう。
このまま世話するなんて面倒だ。
早速配下召喚でヒューマンスライムを呼んで、子供たちを連れて行かせた。
頭はその様子を放心して眺めている。
「おまえ、一体何者だ」
「スライムダンジョン、ダンジョンマスターの雄亮だ。よろしく」
「ちっ、とんでもないやつを襲っちまったぜ…………ダンジョンマスター⁉あのガキ共をどうするつもりだ!」
頭は慌てて俺にくってかかってきた。
なんだ?急に。
「ちゃんと不自由なく世話するさ」
分身がな。
「そ、そうか……」
あからさまにほっとしてる。
こいつもしかして……。
「子供が好きなのか?」
「ちっ、違う!断じて違う!」
大袈裟に首をブンブン振りながら頭は否定した。
過度な否定が肯定になってるぞ。
こんな厳つい大男が子供好きだなんて……俺は無性におかしくなった。
「ククッ」
「わ、笑うな!」
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