第97話

「ぬおっ⁉何者だ!」


「ごきげんよう。人に尋ねるのならまず自分から言いなさい」


 貴族風の男はテレポートでいきなり現れた俺たちに驚いたが、すぐにはっとした表情をして自己紹介した。


「私はガタカ王国スライムダンジョン特別大使のゼガン子爵と申すものだ」


 ゼガンに続いて各国の貴族が名乗る。

 共通しているのはそれぞれの国名の後ろにスライムダンジョン特別大使とついていることだ。


「貴殿はこのダンジョンの関係者か?」


「……ええ、そうですよ」


 ダンジョンマスターという役職でバリバリ関係者だから嘘じゃない。

 俺の所属を聞いて護衛の騎士たちが身構えるのを大使たちはたしなめた。


「我々は各国より貴殿の長に書状を渡しに来た。お目通りを願いたい」


 なぜ各国の代表者の中でゼガンさんが代表して話してるのかを説明しよう。

 このダンジョンはガタカ王国にあるから。はい説明終わり。


 俺に書状か……なんだろう?まさか宣戦布告?

 最近いろいろやらかしてるからなー。


「我が主に何用の書状ですかな?よもや宣戦布告なのではないかの?」


 珍しくドスをきかせた声で老師が言った。

 俺の許しを得ずにこんなこと言うなんて普段の老師なら絶対にありえない行動だ。

 孔明が老師になにか囁いてたけど、今のがその命令か?


「い、いや決してそのような物騒な内容ではない。それは約束しよう」


 ふん、だったら何だ?友好?


「分かりました。ではこれを付けてください」


 大使と護衛の人数丁度の指輪が入っている箱を渡した。


「これは……?」


「この指輪を付けている者のみに反応するテレポートゲートがあるのです。それ以外に変な機能は……付いていないわけではありませんが、貴方方に害になるものはないので安心してください」


 まず護衛たちが恐る恐る指輪を付けて、安全が確認された後に大使たちも付けた。


「それではご案内します」



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 ニヤニヤと変な笑顔を浮かべる少年と、威圧の凄まじい老人に続いてテレポートゲートに乗った私たちの目に入ってきたのは摩天楼と言うべき建物群だった。


 そう、群なのだ。

 一体これほどの数の建築物を建てるのにどれだけの金と人、時間がかかるのか。

 考えるだけで頭がクラクラする。


「うん、お連れした。分かった」


 少年は会議の時にジェノルム殿の使っていた通信魔道具と思われる板に何かを話しかけている。

 一体誰と話しているのだろうか?


「こちらへどうぞ」


 少年に促されるまま付いていく。我々の護衛はもちろん、国の重役を経験した私含め情けなくも各国大使たちはキョロキョロと周りの建物を見るのでその歩みはとても遅かった。


 気がつくと我々はガラスで覆われた部屋へと案内された。

 えれべーたーと言う魔道具らしい。

 本来は透明ではないようで、わざわざ我々に街の景色を見せようとはからってくれたのだ。


 下は恐ろしくて見ることはできないが、正面を見渡すとどこまでも摩天楼が続いていて息を呑む。

 地上で見上げただけではこの広大さは分からなかっただろう。


 えれべーたーが上に着いてもう一つ驚くことがあった。

 なんとこの街は地下にあって、空だと思ってたのは絵だったのだ。


 しかし明るさは外と遜色無い。

 すなわちここは天候に左右されずに農業ができるという事だ。

 この一点だけでも素晴らしい。


「ではこちらからはダンジョンマスターたちの居住区となっていますので変な行動は絶対にしないで下さい」


「たち?一体何人のダンジョンマスターが住んでるのかね?」


「62人ですね。今は仕事で不在のものもいますが」


 62人……と言うことは、この街を敵に回したら62ものダンジョンが同時に敵になるということか……。


「ち、ちなみにどこのダンジョンのマスターか教えていただけますかな?」


「オネストダンジョン、カースダンジョン、クラウンダンジョンの三人が有名どころでしょうか(三人以外の通称知らんし)」


 なんと!全てAランク以上のダンジョンではないか!そのような戦力があれば到底一国では太刀打ちできんな。

 しかも加えてコーメイと剣聖が居るとなると、数カ国で挑んでも良くて相打ちといっところか。


「まあ、今の三人が丁度不在のマスターなんですけどね」


「そのお仕事というのを教えてもらうことは……」


「流石にそこまでは(孔明にOKか聞かないと)」


 ふむ、しかしそれだけのマスターたちが総出で行ってる仕事となるときっと恐ろしい計画に違いない。






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