第94話
「どうだ?」
「予想外です。街を作ってるとは聞きましたが、ここまで発展してたとは……」
ダンジョンに戻った俺は、孔明にまだまだ制作中だが街を見せていた。
自走馬車も特に反応を示さず涼しい顔で乗ってヴァイオレットと三国志談議していたが、どうやら驚かせることはできたみたいだ。
そういえば孔明を仲間にしたことをジェノルムに伝えとくか。一応な、うん。
電話をかけた時かなり狼狽えてたけど知ーらね。報告頑張ってくれー。
「まだ人口30人程度だから、もっともっと人を集めないと街なんて名乗れないけどな」
「なるほど。道理で大きな街なのに人間の生活音が少ないわけです」
孔明を資料室に案内した。
街中を観察できるモニターも設置してあり、かなり気に入ったらしくこれからはここが彼のオフィスになるようだ。
「発展させるにあたってなんかいい考えはないか?」
「まず街に魅力が無いと話になりません。そして知名度、存在を知ってもらわなければそもそも来てくれませんから。ですが、テレビもネットもこの世界にはありませんし、口コミは限界があります…………雄亮さんは世界漫遊中ですよね?宣伝しといてください」
孔明は資料を目に通しながら言った。
「この街の特産品でもあればいいのですが……アダマンタイト製の装備、便利なスライム、日本製品…………完璧じゃないですか。だったらこの街のものだと売り回ってください。値段はここで売るより高めにして」
移動に関しては、テレポートゲートのある派生ダンジョンによって隣町よりも、こっちに来る方が近い場所が多いだろうから俺が売った商品より安く、同じものがあるこの街に来るってことか。
更に孔明は区画分けを見直し始めた。
この調子だと帰ってきたときにはかなり発展しそうだなぁ。
街が発展する様子も見たいけど、旅があるし…………体が2つあればいいのに。
「そんな困った時に僕登場!」
「縁先輩⁉」
いつの間にかオフィスの椅子の一つに先輩が座っていた。
久し振りに来たな。
突然現れた先輩にも驚く事なく、孔明は資料を眺めている。
「どなたですか?」
「雄亮君をこの世界に送った者さ。さて雄亮君、困っている君にこのスクロールを授けよう」
先輩が渡してきたのは、一枚のスクロール。
「いつものUSBじゃないんですね。なんのスクロールですか?」
「分身のスクロール。分身してしばらく別行動した後、もとに戻った時にそれぞれの記憶の共有ができるよ。分身の数には制限なし!」
「凄い!丁度欲しかった物じゃないですか!」
戦いでも多数分身して分身殺法!とか楽しいことできそうだ。
「試作段階だから欠点があるんだよ。傷をおったら分身全てが傷つくんだ。切られてから、フッ、分身だ。ってかっこつけようとしたら死ぬから気をつけてね」
あっぶねぇ。危うくしょうもない死に方するところだった。
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