第73話

「なっ!」


「それは……」


「257位って言やぁ大規模同盟じゃねえか!ユースケのアニキ!オレは一緒に戦うぞ!」


 筋骨隆々なチースはそう言ってくれた。だが、見た目30過ぎのオッサンにアニキ呼ばわりされたくない。


「まあ待て。今回は俺とヴァイオレットで対処する。皆は見学しててくれ」


「どうしてでしょうか?」


「理由は下手に新入りを入れて連携を崩したくない。皆は俺の同盟に入る。つまり部下になるわけだ」


「はい」


「だったら俺が仕えるに値する相手か見極める必要があるだろう」


「おぉ!」


 皆が歓声を上げる。

 チャラチャラしてそうなアキトまで感激した目で俺を見てきた。

 同盟に入ってから何か違うって思われたら嫌だからな。職場見学だ。


「それじゃあダンジョンを紹介するからこれを見てくれ」


 新しく作った司令室では数多くのモニターがある。

 工学系の知識を習得させたヒューマンスライムたちによってうちのダンジョンには電気が通ってる。


 なぜ電気が通ってるかというと、先輩が調整したのか電化製品は魔力でも動く、がそれだと敵に探知されやすい。

 魔力を通す配線を辿られてコアちゃんに迫られるとか間抜けすぎるからな。

 モニターにダンジョンの様子を見せるとマスターたちは驚きの声を上げた。


「これだけの魔道具を用意しておいて魔力が一切感じられない⁉」


「これは……面白いものを持っておられますのう」


 そんなマスターたちが興味をひかれたのは店とモンスター街だった。


「あんな入り口に近い所からコアルームに行けるだなんて完全に盲点だ。しかし、いささか不用心すぎませんか?」


「バトルの時は壁に擬態できるスライムで隠している」


「なるほど。ならば問題ありませんね」


 バレたとしても、すぐに逃げられるように後ろにテレポートゲート置いてるしな。


「あのモンスターたちは何をしているのでしょう?」


「あれはトレーニングと戦闘訓練。安全にレベル上げができて便利なんだよ」


「そうなんですね」


 俺の口調が少々柔らかくなった理由は、ジェイの外見が幼い子供のような見た目だったからだ。


 ジェイはドワーフらしい。俺が知ってるテンプレドワーフと違って、毛深さは個人差があり、全員が酒豪でもないらしい。

 テンプレなドワーフ要素は背が小さいのと手先が器用という二つだった。


 異種族といえば、ソフィア、フィー、ピクリナの三人はエルフだ。

 エルフの方は俺の知ってる通りのエルフで耳が大きく皆美しい。


「ユースケ様ー、私あの器具がほしいですわ」


 ソフィアが俺の腕を取ってねだってくる。

 本人は無自覚なのだろうか、暴力的なまでの胸部に俺の腕が挟まれる。


「あ、あげるから少し離れて」


「はーい」


「はいはい。フィーも欲しいです」


「……私も」


 フィーとピクリナにもねだられた。

 二人は姉妹と言っても良いくらい顔が似ていて、違うところはフィーは小柄で銀髪、ピクリナはすらっとした高身長でピンク色の髪だ。

 ……この三人、年は離れてるが同じ村の出身だ。


「二人は姉妹か?」


「フィーは一人っ子です」


「エルフの顔はタイプが少ない」


 世界には同じ顔の人が三人いるって言うからな。エルフの場合はそれがもっと多いってことか。


「俺のダンジョンはこんな感じだな。先輩マスターとしてどう思った?」


「広い」


「デカイ」


「おもしろーい」


「今までに例がありませんの」


 悪くはないみたいだ。リーヴァたちが進化したらそれぞれに専用のフロアを与える予定だからもっと大きくなるぞ。

 さあ、明日はバトルだ。






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