第74話
「クラウンダンジョン、ジョーカー」
「スライムダンジョン、ユースケ。ダンジョンバトル」
「レディー」
「「ゴー!」」
今回の相手のジョーカーは、ピエロの仮面を付けていて表情が読み取れない。
さっそくダンジョンの中に入ってきて…………おいおいおいおい。
「ウォールスライムに気づきやがった!」
すべてのモンスターがダンジョンの奥へ行かず、擬態していたウォールスライムを攻撃し始めた。
だが、これは初見では絶対に見破れない。こちらに居るダンジョンマスターの何者かが裏切ったという明確な証拠だ。
『ユースケ、どうするの?』
「…………ヒューマンスライムはショップを放棄して撤退。その後すぐにテレポートゲートの電源を落とせ。ここにいるやつらはコアちゃんを死守、万が一に備えてコアちゃんはスライムアーマーを着ておいてくれ」
『了解致しました』
さて、他のショップはゲートを閉じれば大丈夫だが、ここはコアルームの後ろにスライム保管庫とスライム用通路がある。
ここを突破されるとスライム用通路はうちのダンジョンの何処でも行けるから詰む。
絶対絶命だ…………とでも言うと思ったか?
「スライム街のモンスターは
『あたしは?』
「ヴァイオレットは他のマスターたちと隠し層に行って、その後はゴ老師と協力してエルフ娘たちを拘束。できるだけ手荒なことは控えてくれ」
『分かったわ』
『了解ですじゃ』
そう。裏切ったマスターはソフィア、フィー、ピクリナのエルフ三人娘。鑑定のおかげで裏切ることは事前に察知していたので、彼女たちには秘密で第二迷路の数倍の広さの第三迷路と、第二、第三迷路の間に隠し層を作っておいた。
隠し層は第三迷路の最下層にある上り階段を使って行かないといけない。
もちろん上り階段は罠満載だし、アダマンタイト装備のヒューマンスライムが何人も守ってるからよほどの敵が来ない限り安全だ。
問題はこちらの撤退にも時間がかかるという事だが、こればかりは俺が頑張るしかない。
どんな裏切り方をしてくるのか具体的に分からなかったが、まさか初見殺しのネタバラシという一番嫌な裏切り方をしてきた。
「30分は時間を稼ぐ。それまでに全員配置につけ」
『はい!』
ウォールスライムが倒されて大量のモンスターが殺到してきた。
「ふふふ、よく来たな。どうだ?俺に付かないか?そうすれば世界の半分を貴様らに与えよう」
俺の伝統的な問いかけに、もちろん答えてくれるわけもなく攻撃された。
トロール、オーガー、グール、ケルベロス、ワイバーン、さすが大規模同盟だ。モンスターのバリエーションが豊富だ。
だが俺はアダマンタイト装備。敵の攻撃は痛くも痒くもないが、俺の攻撃は敵モンスターをいとも簡単に屠ってゆく。
屍の山を築いて懐中時計を見ると33分経過していた。マップを確認すると全員命令通りに動いたようだ。
「時間稼ぎはこんなもんだな。俺は逃げるが、お前らは正規ルートでダンジョン攻略しな!じゃーな」
俺はテレポートゲートの上に立ち、移動したあとすぐに電源を切った。
スライム用通路はダンジョン壁で完全封鎖。これで完璧。
さて、裏切り三人娘の面でも見に行くか。
「老師、協力感謝します」
「ほっほ。なんのこれしき儂を信じてくれたことの方をこちらが感謝したいくらいですじゃ」
全力疾走してうんざりするほど長い三層を最短で走り抜け、隠し層まで来た俺はスポーツドリンクを飲んで一息ついてから、マスターたちがいる部屋に来ていた。
ダンジョンバトル中は、マスター権限のダンジョン内無制限テレポートを封じられるから鬱陶しいことこの上ない。
作った本人をうんざりさせるダンジョンだ。敵はもっと苦しむだろうな。リーヴァたちもパーティーを組んで第三迷路をうろついてるしな。そもそも第二迷路を抜けることができるか疑問だ。
さて、部屋の隅に両手を縛られたエルフが三人。彼女たちはずっとうつむいてる。
「抵抗はしなかったけど、一応手は縛っておいたわ」
「うん、ありがとう。でも縄は解こう。痕になったら可哀想だ」
「ユースケ様、彼女たちが裏切ったのは本当ですか?」
ソランが怒りの表情を浮かべるマスターたちを代表して俺に聞いてきた。
「ああ」
「なんだって⁉こいつら許せねぇ!」
単細胞な気のあるチースが怒鳴って、三人娘はビクッと体を震わせた。
うん、チース迫力あって怖いもんな。
「まあ待つんだチース。家族が人質にされてるんだ。仕方ないだろう」
「え?」
俺の言葉に初めてソフィアたちはどうして知っているのかと反応して頭を上げた。他のマスターたちも驚いた様子だ。
人質にされてるのは家族と言うより村ごとだ。
エルフは村が一つの家族みたいなものらしく、絆が強い。今回はそこを狙われたのだ。
「安心しろ。うちのヒューマンスライムたちが救出しに行ってる。戦力的に犠牲者無しで助け出せるさ」
俺がそう言うと、安心した三人は抱き合って涙を流した。
チース含め、彼女たちに怒ってたマスターたちは、どうすればいいのか分からずバツが悪そうな顔をして突っ立っている。
ヴァイオレットがそんな微妙な空気を払うように手を叩いた。
「さあ、いつまでもそんなシケた面しないで。あなたたちの未来の主が勝つところを見てなさい」
「と言われてもしばらく現状維持なんだけど……」
みんな漫画みたいにずっこけた。
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