第68話

「はい。できたわよ青い点が友好的なダンジョン、赤が魔王の配下のダンジョンよ。魔王は魔界にいるから安心ね」


「そうか。ん?青が多くないか?」


 以前パーティーの際に同盟を申し込んできたマスターは十人ちょっと。だが、地図にある点はその倍近くある。


「あの後モンスターをあたしのダンジョンに使いに回してきて同盟を申し込んできたマスターが何人もいたの。最初はバトルの申請かと思って肝を冷やしたわ」


 バトルや同盟の申込みってモンスターを仲介してもいけるのか。

 よく考えてみればそうだよな。引きこもりのダンジョンマスターが直接会うなんてパーティーの時くらいだろ。


 俺とヴァイオレットの出会い方が異常だったんだ。

 それもヴァイオレットの方はドッペルゲンガーだったしな。

 まだまだ知らないことは多い。


「なあ、少しショップの画面を見せてくれないか?」


 ヴァイオレットのショップの商品一覧にはもちろん日本製の食品、電化製品、漫画等は無く、魔道具も俺より少なかった。


「やっぱり俺のショップのほうが品揃えがいいな。ひょっとして縁先輩が作ったからか?」


「誰?」


「俺の先輩。今度紹介するよ」


 ヴァイオレットと違う魔道具系の商品は性能が高い。ゴーレムメイカーもだ。

 俺の頭の中でチートアイテムをせっせを作る先輩を幻視した。


「ヴァイオレット、これプレゼントするよ」


 俺はポケットに入れてたネックレスをヴァイオレットに渡した。


「えっ⁉プレゼント?ありがとう。大切にするわ!」


「そのネックレスを付けておけば死んでも一度だけ設定しておいた場所で生き返ることができるから常に付けておいてくれ」


「ユースケ……あたしのことを心配してくれるの?」


 俺は頷く。当然だ。ダンジョンマスターの初めての友達なんだからな。


「……そう」


 ヴァイオレットは髪をイジイジしながらそっぽを向いてポツリと言った


「明日からダンジョンに冒険に行くから今日はもう帰る。また今度な」


「うん、ばいばい」


 なんか心ここにあらずって感じだな。

 何かいいことでもあったのだろうか?ともかく帰ったら名付けだ。

 帰った俺はダンジョンのモンスターたちに名付けをするのに徹夜した。疲れた。


 翌日疲労の溜まった体に鞭打って、俺はジェノルムの部屋経由でギルドの受付に行った。


「おはようございます。ユースケさん。その、大丈夫ですか?」


 慣れない徹夜のせいで目の下にはっきりとくまが浮かんでいるのを見て、お姉さんは引き気味だが心配してくれた。


「大丈夫です。常設依頼のモンスター捕獲してきました」


「早速ですか!早いですね。……ところでそのスライムはどこに?」


 アイテムボックスからアダマンタイトスライムやドクタースライム、その他スライムたちを出すと、カウンターから溢れてしまった。


「こ、こんなに⁉そもそもここからスライムダンジョンまで何日もかかるのに……いやいやいや!このスライムたちどこから出したんですか⁉」


 ツッコミが渋滞してる。


「近くにスライムダンジョンのテレポートゲートがあるダンジョンが有ったので往復には時間がかかりません。今のはアイテムボックスの魔法です。奥の方を探索してたら宝箱の中にスクロールがありました。スライムの数が多い理由は企業秘密です」


「ギルマスー!」


 お姉さんは叫びながらカウンターの向こう側からジェノルムを引っ張り出してきた。

 部屋にいないと思ったらこっちで仕事してたのか。


「なんだ?うおっ、ユースケよう。やりすぎるなよって言ったよな?」


「やりすぎか」


「十分やりすぎだ。アダマンタイトスライムもいるな。これで大物の討伐依頼でもこなせばSSランクは固いな。とりあえずAランクに昇格だ。多分JからAに一日でなるなんて世界新記録じゃないか?」


 冒険者カードを出せと言われたので渡すと、白金製のカードになって帰ってきた。

 これがAランクのカードでAランク冒険者の別名はプラチナランクだ。


 なんかクレジットカードみたいだな。

 なんにせよ、これである程度のダンジョンなら挑むことができる。早くチビ共を進化させてやらないとな。


「アイテムボックスのスクロールがダンジョンにあるのか?」


「うん、あったけど。依頼には無かったから手持ちは三枚だぞ」


「金に糸目はつけん!売ってくれ!」


 くわっと目を見開いてカウンターから乗り出してきて頼まれた。

 そういえば、タッタリーのじい様が失われた魔法だとか何とか言ってたな。完全に忘れてた。


「ちなみに依頼があったとしてランクで言ったらどのくらいになるんだ?」


「無いから分からん。まあ伝説の魔法と呼ばれてるし便利すぎるからLランクと言っても過言ではないかもしれない」


「へえ…………あ、もうそろそろスクロールの入った宝箱を置いたところに冒険者がたどり着きそうなんだけど」


 小声で言うと、ジェノルムは。


「仕事増やすのやめてくれないか?」


 とぼやいた。

 大概の人は俺のダンジョンによって利益しか得てないが、ジェノルムはそうでは無いようだ。

 利益以上に仕事が増えるらしい。

 働き者のギルマスに敬礼!




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