第65話
うーん、いざ刺すとなると緊張する。
できるだけ痛いのは嫌だからちょこっと刺したいのだが、怖くて手が震える。
グサッ…………刺しすぎたー!指先の赤い玉がみるみる大きくなって、すぐにダラーッと一筋の赤い線になった。
チクってするつもりだったのに……。
「これでいいですか?」
血がべっとりついた冒険者カードをお姉さんに渡す。
表情が引きつりながらも笑顔でカードを受け取るお姉さんは流石プロだ。
「は、はい。お受け取りします……57レベル?以前は傭兵とかやってましたか?」
「いや、自宅警備を少々。でも週一くらいの間隔で不法侵入者が襲ってきてたので返り討ちにしてましたね」
嘘は言ってない。でも57レベか。初心者狩りや盗賊倒しまくってたしなあ。
あいつらも弱いわけじゃなかったから妥当なレベルか。
あ、あとはタッタリーでの虎の分だな。
「57はランクだとどの辺りですか?」
「大体BかAですね。この辺りから年のせいもあってレベルもランクも伸び悩む人が多いのですが……ユースケさんはお若いので中々有望株です。期待してますよ」
BかAってことはアダマンタイト装備無しだとSには敵わないってことか。
いや、武術ができない分同じ装備条件ならBランクにも勝てないだろうな。
まあそうは言っても事実、俺はアダマンタイト装備を持ってるからSランクやSSランクになったとしても問題ないだろう。
「ほう。57レベルだったのか。引きこもりのくせに凄えじゃねえか」
お姉さんの横から顔を突き出したジェノルムがそう言うと、驚いたお姉さんが飛び上がった。
「ギルマス⁉この人とお知り合いですか?」
「友人だ。スライムダンジョンの件でいろいろ世話になっててな。おいユースケ。そのレベルなら俺の権限でBランクから始められるがどうする?」
「…………やめとく。特別扱いされて相手の実力も測れないようなバカに絡まれるのは嫌だから」
「ははは、そうだな。いらん提案だった。忘れてくれ」
俺とジェノルムの会話を聞いて何人かの冒険者がサッと視線を下に向けた。恐らく彼らが相手の実力も測れないようなやつらだろう。
「気にしないで。まあすぐにAランクにはなるさ。ランクアップはどうすればできるんだ?」
「依頼の成功数や難易度、その他諸々を判断して俺が決める。依頼は受付の左右の掲示板に張り出してるぞ。右は何時でも誰でも受けられる常設依頼、左は依頼の書かれた紙を剥がして提出する事で依頼を受けられる一般依頼だ」
更に続きをジェノルムが言おうとしたところでお姉さんが止めた。
このままだと自分の仕事をすべて取られるからな。
「ここからは私が。常設依頼は受けると宣言しないので、失敗するという概念がありませんが、一般依頼は受付に提出してるのでその依頼は紙を提出した人だけが受けられるということになります。よって依頼に失敗さた場合は違約金が発生し、それなりの額を払わなければなりません。なので最初は一般依頼を受けずに、常設依頼の条件を頭に入れつつダンジョンに潜り戦いに慣れることが、初心者の方が成功する近道です」
その後にお姉さんは俺のレベルなら簡単な一般依頼くらいなら大丈夫だと思うとは言ったが、やはりオススメは常設依頼らしい。
急がば回れだな。
たまに妙な自信を持った初心者が一般依頼に失敗して借金まみれになることもあるらしい。
「なるほど。ありがとうございました。ところでお姉さんって彼氏いますか?」
「夫が居ます」
ちくしょう。どこもかしこも春が来てやがる。
俺の青春は何処にあるんだー!
……常設依頼を見に行くか。
「これは……」
ドクタースライムの捕獲……推奨ランクA
キャンディースライムの捕獲……推奨ランクI
メディスンスライムの捕獲……推奨ランクB
シェフスライムの捕獲……推奨ランクD
スミススライムの捕獲……推奨ランクS
アダマンタイトスライムの捕獲……推奨ランクSSS
エトセトラ
数十ある常設依頼の半分以上がスライムの捕獲依頼だ。
俺のダンジョンのスライムってそんなに需要あったんだ。
「お前なら余裕だろ………………何匹連れてきてもいいがやりすぎるなよ」
人間に守られて安全な状態で外を監視できるスライムが増えるなら大歓迎だ。
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