第64話

 頭のおかしな王女が父親の武闘派王に連行されて早一週間。王様は約束通り王女の管理を徹底してるようで、このダンジョンには今のところ来ていない。

 それは素晴らしい事なのだが。


「やること無ぇー」


 暇を持て余していた。

 ガチャはすぐ終わるし、モンスターの訓練はヒューマンスライムたちがしてくれるし、店もヒューマンスライム任せ。


 駆除しまくった甲斐あって最近盗賊も少ないし、俺がしたことと言えば新しく作ったダンジョン入り口横に店を作ったくらいだ。

 ヒューマンスライムにすべて任せてしまったので俺は今放置ゲームをしてる状態。


 つまり待つだけだ。

 ゲームとかしたり、ラノベ読んだりアニメ見たりしてるが、ずっと籠もりきりだと日の光が恋しくなるし少しは体を動かしたい。

 俺が延々とゴロゴロしてても読者はつまらないだろう。


「そうだ、冒険者になろう」


「なぜその結論に至るのですか……」


 □■□


「てことで冒険者としての身分をくださいな」


「子供が菓子をねだるような言い方するな。まったく、いっつも急に来やがって……」


 いつものように菓子折りを持って行き、ジェノルムの部屋に来た俺は冒険者になる為に持ってるコネを惜しみなく使用していた。


「だって俺暇だからさー。他のダンジョンを偵察するついでにモンスターの訓練しようと思って」


 引きこもり生活もいいが、せっかく異世界に居るんだから、異世界ならではの体験をしなきゃ損だろ。

 アダマンタイト装備で俺TUEEEEEしたいんだ!


「別に俺に頼まなくても、受付に行けばすぐ登録できるぞ」


 そうだったのか。てっきり身分証明書が必要なのかと思ってた。

 異世界人の俺はこの世界の身分証明書なんて持ってないから焦ってた。


 縁先輩に頼めば簡単に偽造してくれるだろうけど、あいにく先輩を自由に呼び出すことはできない。

 俺は今すぐに冒険者になりたいのだから。


「それじゃあ受付に行ってくる。帰るときにまた来るなー」


「あ、おい」


 部屋を出て階段を降りてホールへ行くと、冒険者たちは俺をちらりと見て、しかしすぐに仕事の打ち合わせや交渉に戻った。

 絶対に大したことないって思われたな。


 それもそうか、Tシャツジーパンの少し変わった服装とはいえただの子供だったらそりゃ興味も失せるわな。

 よし、ここは一つ驚かせてやろう。


 アダマンタイトスライムフル装備して、ヴァイオレットに教えてもらった月に十回使えるダンジョンマスター奥の手【配下召喚】を惜しみなく使い、ベビードラゴン、リヴァイアちゃん、チェニックス、二メートル級のアダマンタイトゴーレム。後はタッタリーの村に呪いをかけてたヴァイオレットの虎モンスターを食わせたモンスタースライムを召喚した。


 突然のことに唖然として俺たちを見つめる冒険者の間を通り抜け、受付のお姉さんの元へ向かう。


「こんにちは。冒険者登録をしたいんですけど」


「…………あ、はいこんにちは。新規登録ですね。では、こちらに必要事項をお書きください」


 カウンターに置かれた紙は、名前、性別、年齢、レベル、それとポジションを書くだけ。

 かなり適当だな…………え?レベル、え?この世界レベル制あるの?鑑定にステータス欄無いからレベルの概念がない世界かと思ってた。


 レベルはこの際まあいいか、ポジションってのはRPGで言う職業だ。

 職業は……コイツらいるし、テイマーで良いか。

 レベルは知らん。


「ユースケさんですね。レベルは分かりませんか……新規登録された方はJランクです。こちらが冒険者カードです。どうぞ」


 渡されたのは何も書かれていない黒いカードと針。

 テンプレな血を落とすやつか?


「血を落とすんですか?」


「はい。そうする事で先程記入して頂いた情報が登録されます。レベルも表示されるはずです」


 だったらレベル記入させる必要あったか?





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