第63話
「クッ、往生際が悪いですね。ならば!」
「そこまで!」
次の手を打とうとしてきたリシーアの動きを、威厳のある低い声が止めた。
「……お父様⁉どうしてここに…………」
あの人がセラン王か。短く刈り込んだ頭とがっしりした体を鎧で包んでいる。
王様というよりも、騎士団長といったほうがふさわしい見た目だ。
後ろには数十人の騎士と兵士がいる。
「帰るぞリシーア。最近のお前の行動はいくら教会の名の下にあっても目に余る。しばらく城で謹慎だ」
「お父様、何を言ってるのですか?はっ!もしやモンスターに洗脳をされたのですか?」
リシーアの成り立たない返答にビキッと額に青筋を立てるセラン王。
もうブチ切れる寸前じゃないか。
拳骨を握ってるところを見るからにかなり武闘派な王様だ。
「ディープスリープ」
「不意打ちと、は……ひ、卑怯な」
リシーアが王様に気を取られて少し油断した隙を狙って俺は魔法で彼女を眠らせた。
「助かる。ジェノルム殿から聞いて慌てて飛んできた。我が国の危機を救ってくれて感謝する」
「いえいえ、家の庭に狂犬がいたから追い払っただけですよ…………もう来させないでくださいね」
「教会の抗議は抑えて努力はする。が、なんせこれだからな。保障はできん」
娘を狂犬呼ばわりしても怒らないし、これ呼ばわりか。今までのことで相当頭にきてるんだな。
捕まえた直後なのに脱走される前提みたいな言い方だ。
だが、王様がこう言いたい気持ちは分かる。
この王女様は全裸で牢屋に閉じ込めてもいつの間にか外に出てきそうな気がする。
はっきり言ってホラーの域にあるんだよこの王女は。
俺も100%拘束とかは期待していない。
かと言って、そうポンポンと脱走されてここに来られるのは困る。
ここは一つ王様にやる気を出してもらおう。
「セラン王様、これをお収めください」
「む、これは……アダマンタイト製の剣と鎧ではないか⁉よいのか?」
「俺はもう一セットありますから。見返りと言ってはなんですが、王女様の管理を厳重にしてくれると助かります」
これは賄賂になるのだろうか?なんだかいけないことしてる気分だ。
ただの宝石とかなら考えておくとか言葉だけでで済むけど、今回は最高位の冒険者ですら手に入れられるか分からない武具だ。
後で返せとか言われたくないだろうから全力でリシーアの管理をしてくれるだろう。
実際考える素振りをしている王様の視線は装備に釘付けだ。
この王様見るからに武闘派だから絶対に欲しいんだろう。
「うむ!このバカ娘は城から一歩も出さん。それと君に何かあれば我が国が後ろ盾になろうではないか!」
ついでにやんごとなきコネができた。これはラッキー。
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