第62話

「覚悟しなさい!ハアッ!」


 どこからそんな力が出てくるのか分からないが、リシーアは一度踏み込んだだけで十数メートルある距離を詰めてきた。

 どう見ても後衛の見た目なのになんてスピードだ。


「ぐっ」


 足元を狙って振られた錫杖を剣を逆手に持ち変えて受け止めた。

 細枝のような腕からは信じられないほどの怪力で、ジーンと受け止めた腕が痺れる。


 アダマンタイト製の剣で受けて刃こぼれ一つしないってことは、この錫杖にも純度百とは言わないが、アダマンタイトが使われてるな。狂人が力を手に入れるとこんなに厄介だとは。


「リザレクション!」


 リシーアが放った蘇生魔法の光に包まれた俺の体に激痛が走った。

 全身の神経を金槌でガンガン殴られてる気分だ。


「ウガァァァー!イッテーー!うっぷ……」


 痛みだけじゃない。目眩や吐き気までする。何なんだこれは。

 世界が回っているように見えてまともに立つこともままならない。


「回復魔法は何も怪我をしてない人にかけると過剰回復と言われ激痛が走ります。回復魔法で激痛、ましてや蘇生魔法ならば苦しみはその比ではありません」


 回復魔法にそんな使い方があったなんて……さすが本職と言うべきか、神の力をこんな使い方するなと言うか……。

 くそっ、なんにしろしばらく俺は動けそうにない。


「オートモード」


 俺の命令を聞いたスライムウェアが自動戦闘を始める。

 うっ、これはこれで苦しい。

 高熱かつ筋肉痛の肉体を無理やり動かしてるのと変わらないことだからな。


 スライムウェアの反撃になぜ蘇生魔法をかけてフラフラの俺が動けるのか驚き、その後苦々しげに顔をしかめながらも、リシーアは魔法で見えない障壁を張りながら反撃を試みた。


「光よ」


 再び熱光線を放ってきたがその太さは先程の数倍太い。

 だが、スライムウェアは光線を避けようとせず、剣を扇風機のように回転させて光を散らした。


 すっげー。こんな動作教えてないのに勝手にやってくれた。

 さてはこのスライムウェア、俺より戦闘センスあるな?






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