第61話

「神の代弁者たる私に剣を向けるだけでは飽き足らず、あまつさえ犯罪者扱いとは……万死に値します!」


 背負っていた身長程の錫杖を俺に向けて喋ってくる。

 だが俺にも一つ言わせてほしい。俺がいつ剣を向けた⁉まだ抜いてすらいないんだが!

 そろそろこいつの頭の中がどうなってるのか興味が出てきた。


「おい、従者さんたち。今までは国が賠償してたり、謝罪しまくってたから何とかなってたかもしれないが、今回ばかりは洒落にならないぞ。既にお前らの国に冒険者ギルドマスターのジェノルムが報告しに行ったからな。手を出さなければいくらか口添えしてやる」


 従者たちは俺とリシーアを交互に見て、こそこそと話し合った結果……俺の方に来て彼女と対峙した。


「なっ⁉あなたたち!これはどういう事ですか⁉」


「も、申し訳ありませんリシーア様。正直もうこれ以上ついていけません」


「今まであなたのしてきた事の後始末を誰がしていたと思いますか!」


「以前、家族のように共に暮らしていた少女の親代わりのモンスターをリシーア様が殺し、少女は心を閉ざしてしまいました。彼女は今でも王城で療養中なのです。我々もあの頃からあなたの行動が本当に正しいものなのかわからなくなりました」


 王女の権力を後ろで振り回す小悪党かと思ってたけど、彼らこそリシーアの本当の被害者だった。

 中にはとうとう自分の本音を言えて涙を流している人もいる。


「くっ、さては店主に怪しげな術で操られましたね。待ってて下さい、私が必ず救ってもとに戻してみせます!」


 耳が、聴こえないのか…………丁寧に味方できない理由まで説明してたはずなのに。


「あの王女様はずっとあの調子なのか?」


「聖女として教会の者から、幼い頃より教典を教え込まされた結果です。思い込みが激しいのは……生まれついての性質でしょう」


「既に各国はリシーア様を言葉で説得することは諦めてます。できるだけ悪い噂を流さず、リシーア様に目を付けられないよう気をつけるしかあの方の被害を避ける方法はありません」


 なまじ力があるから本当にたちが悪い。

 各国から災害扱いされるとか本当に救いようがないぞ。





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