第60話

「やめてくれ!このダイアモンドスライムを連れて行かないと俺の借金が!」


「かわいそうに、そのモンスターに心を奪われたのですね。すぐに解放してあげます」 


「なんで人の話聞かないんだよー!」


 リシーアの掌から放たれたの聖なる波動が憐れな冒険者に降りかかり、彼が守るように抱え込んでいたダイアモンドスライムを包み込み光の粒子に還した。


「あ、あぁぁーーー!」


「礼には及びません。私は世界中の人々に救いの手を差し伸べる者ですから」


 恐らく借金返済の最後の希望を失った男の慟哭を、なぜか救われたことに感謝して泣いて喜んでいると勘違いしているリシーア。

 彼女の目は飾りなのだろうか?


 あの男の借金の原因は、治療薬がバカ高い病にかかった妹の治療費のためだと鑑定に出てたからプレゼントしたダイアモンドスライムだったのに……何人目だ?ここまでが来る間に何人のクレイジー聖女被害者を見てきたか分からない。


 被害者にそれぞれ補填のスライムを差し上げてたら対応が後手後手になっちまった。

 ここまで被害者が出てしまうと、流石に見てるだけってわけにはいかないな。


「そこまでだ!」


「あなたは……店主?」


 この女……名前忘れやがったな。会ったのニ、三時間前だぞ。

 取り敢えず泣き崩れている冒険者にダイアモンドスライムをあげた。


「俺はもう一匹持ってるからあげますよ。妹さんを幸せにしてあげてください」


「あ、ありがとうございます!この御恩は一生忘れません!」


「浄化の光よ」


「やめろつってんだろが!」


 空気を読まずにまたスライムを殺そうと聖女の放った光の波動を、間一髪アダマンタイトソードで切り裂いた。


 この光はモンスターが触れたら死んでしまうようで、装備にスライムは使えない。

 俺は普通のアダマンタイトアーマーに、下の服をスライムウェアにして波動があたっても大丈夫な状態かつ、アダマンタイトスライムアーマー装備時と同じ様に動けるようにした。


「なぜ邪魔をするのですか?」


「商人として自分の客に迷惑をかける犯罪者を野放しにできないだけだ!」


 俺が言い終わると同時に、彼女は無言で熱光線を放ってきた。

 危な!光の波動だけじゃないのかよ。敵認定した瞬間容赦がないな。





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