第59話
「そもそもこのダンジョンを攻略して大丈夫なんですか?このダンジョンって確か、冒険者ギルドや商人ギルドから公に保護されてるはずですけど……許可貰ってるんですか?」
従者の人たちを見ると、痛い所を突かれたと苦虫を噛み潰したような渋い表情だった。
ふーむふむ、どうやら王女様が勝手に行動してるようだ。だったら止めろよ。
「許可など必要ありません。悪しきダンジョンマスターの巣食うダンジョンは破壊する。ただそれだけです」
だめだ。この王女様じゃ話にならない。ここは適当にやり過ごして、ジェノルムに相談しに行くか。
「……なるほど。まあ初めてですし、お試しという事でいくつか差し上げましょう」
「良き判断です。あなたにシルビス様の祝福を」
一瞬俺の正体を明かしたらどんな反応をするのか気になったが、やめておいた。
インスタント食品をいくつか渡して満足した王女様が店を出ていったので急いでジェノルムの部屋へのテレポートゲートに乗った。
□■□
「なにぃ!セランの王女が来ただと⁉」
「そうそう。どうにかならないか?いくらスライムダンジョンが悪人以外積極的に殺さない主義とは言っても、俺の命を狙ってるんだから流石に徹底抗戦するぞ。でも、いくらなんでも王女様殺害は外聞的にも悪いし」
「当たり前だ!」
俺が手土産に持っていったカステラを食いながらリシーアについて話すと、ジェノルムは青い顔になった。
俺のダンジョンは多くの国に莫大な利益を与えている。そんなダンジョンを一国の姫が破壊したら。
「国際問題だ……」
公では無いが、人族の殆どの国が暗黙の了解で保護しているダンジョンを潰そうとする国がいたら、バッシングどころじゃない。
それを口実に戦争を起こされる可能性も大いにある。
俺が王ならそうする。
「セランの王様にチクるか」
「そうだな。セラン王は思慮深いと聞く。むしろ、このことを聞いて必死になって止めるだろうな。よし、そっちは俺が行こう」
俺が行っても、城の門の前で止められるもしくは攻撃されるが、ギルドマスターならば話を速やかに通すことならできるらしい。
そっかーお父さんの方はまともなのか。どんな教育したのだろうか?
「あの態度を見るからにリシーア王女の奇行はこれが初めてじゃないんだろう?他は何をやってるんだ?」
「テイマーのモンスター殺害は数え切れないな。後は、魔族の貴族の旅行者を半殺しにして大陸間戦争一歩手前になったこともあったな」
十代の少女の経歴か?
問題児どころじゃないぞ。十分に犯罪者だ。
なんでそんな常に起爆状態の爆弾みたいな人間を放置してるんだ。
「シルビス教は教義上唯一、冒険者と一緒に戦うプリーストやプリースティスを排出する宗教だからな。聖女認定されてる者に逆らえる国も組織も少ない。
相当厄介な宗教だ。確かに回復役無しでダンジョンを挑んだら危険だしな。
ドクタースライムとメディスンスライムが居れば必要ないかもしれないが、奴らはセットじゃないと使い物にならないし、そもそもレアだからまだまだ聖職者の需要はある。
あれ…………あの王女、うちのスライムをテイムした冒険者たちに迷惑かけてるんじゃないか?
「ジェノルムは俺のダンジョンを経由してセランに行ってきてくれ。俺はあのイカれ聖女が問題行動を起こさないか見張るから」
「お、おう。もう手遅れかもしれないが……」
嫌なこと言うなよ。
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